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APU、来春「サステイナビリティ観光学部」を新設、その狙いと特徴とは-李燕学部長/土橋卓也教授

  • 2022年11月11日

地域の持続可能性を学ぶフィールドスタディを重視
理論と実践の両輪で主体的に学びスキルを習得

-卒業後、学生にはどのような結果を出してもらいたいと思っていますか。また、日本の地域がどのように変化していくことを期待していますか。
(李氏写真)

 大都会でも小さな町でもいいですが、その場所の良さを見つけて、世界の舞台で発信できるような人になってほしいと思っています。観光でも、地域開発でも、あるいは起業家としても。私が考える学部というのは、知識を身につける所ではありません。知識は指数関数的に増えていきますが、大学ではそのなかのほんの少ししか学べません。

 ですので、知識や理論の教育ももちろんですが、サステイナビリティや観光に興味を持った学生が、そのテーマを通じて、実践的な能力を身につけることが大切です。その能力があれば、どの分野、どの社会変化でも活躍できます。それは私自身の経験からも言えることです。

 現在、多くの企業がESG経営に注力しています。それは観光には関係ありません。実は、文部科学省に新学部設立の申請をしたとき、就職の見込みについては、観光業に限定していません。持続可能な社会の実現に取り組むすべての産業において必要な実践能力、国際通用性を身につけることを軸に据えています。

⼟橋 新学部を卒業していく学生に求めたいのは、考える力です。知識と情報はいくらでも瞬時に手に入ります。新学部ではそれらを踏まえて判断する力を育てていきたいと考えています。実際に社会で通用するかどうかを見るために、学生時代にさまざまな課外活動を通じて、まずはやってみて、失敗して、社会に出た後に、自分で考えて、ソリューションを提案できる学生になってほしいと思います。

-観光産業には、どのような影響を与えてほしいと期待していますか。

 日本には観光学部は多くはありません。観光は人材が一番大切です。持続可能性を考えながら、イノベイティブな観光産業を築いてほしいと思っています。日本の良さは、まだまだあります。それを見つけて、磨いて、大事にして、地域のキラーコンテンツとして発信すれば、地域の文化歴史の保護にも繋がるし、経済活性化にも繋がる。そういうことができる人が増えてほしい。

 環境と開発は矛盾するように聞こえますが、観光はこの2つを結びつけられる産業です。環境を良くしていくことと、地域資源を保護していくこと。日本は、自治体が消滅するような話がありますが、地域固有のものはグローバリゼーションのなかで薄れていく恐れがあります。それも、持続可能性の問題だと思います。生物はダイバシティがあるからこそ生き残れる。文化もダイバシティがあるから面白い社会。環境と開発を通じて、そうした地域のダイバシティを尊重して、保護していくような機会や人材があれば、観光業の持続可能性につながるでしょう。

⼟橋 旅の形は変わっていくでしょう。そのなかで、国際学生と国内学生が半々の環境で観光の勉強をしていくと、それぞれのパースペクティブが新たなものを創出して、観光に刺激を与えていくのではないでしょうか。観光業も変わらざるを得ない状況のなか、観光による地方創生は、日本人だけの視点では難しいかもしれません。一方で、母国に戻る国際学生は日本的視点を学んで帰ります。それが良い相乗効果が生み出し、大きなプロダクトを創り出すのではないかと期待しています。