民間主導で稼げる訪日ビジネスを、街づくりで誘客強化
訪日ビジネスで外貨獲得、地域の人材育成を
「住んでよし」の街づくりで観光客を誘致
「住んでよし」の街づくりで観光客誘致
次に登壇した西川氏は、日本のインバウンド市場について、「2000万人になったとしても1日5万5000人。フランスの1日22万人強と比べるとまだまだ少ない」とし、日本の経済規模からすると、「2000万人でも観光後進国、ポテンシャルはさらに高い」と主張した。
その上で、観光立国に向けては「国民一人ひとりが意識を転換して、本気で取り組んでいく必要がある。チェンジはチャンス」と強調。特に地方の市場開拓については、国、企業、地域が既成概念を打破し、次世代に向けたビジョンを描くことが不可欠とした。
地方都市の街づくりに関わってきた西川氏は、観光に大切な要素として、西洋史学者木村尚三郎氏の「住んでよし、訪れてよしの地域づくり」という言葉を引用。「地元の人と同じ空間を共有し、その土地のライフスタイルを体験することが好まれている」と話し、「住んでよし」の街づくりをもっと磨いていくべきだと強調した。
西川氏は例として、小樽、川越、長浜、豊後高田などの地方都市をあげた。これらの都市は景観整備に積極的に取り組み、効率的な共通化から差別化に転じ、地域の個性をつくり出す努力を続けてきた。その結果、その土地らしい生活文化や特別な空気感は国内観光需要を拡大させてきたという。西川氏は「インバウンドも同じことだろう」と話し、街づくりの重要性を指摘した。
また、「地域づくりは人づくり」との考えから、「地域の歴史文化を次の世代に伝えていく『郷育』が必要」と主張。観光を元気にするのは愛郷心だと訴えるとともに、「インバウンドで人気が出れば、それが地域の誇りにもなる」と話し、地域づくりとインバウンド活性化の相乗効果に期待を寄せた。
このほか、西川氏は地域で実施すべき具体的な取り組みも紹介。「たとえば、中国人は金を好む。タイ人に人気なのはオニツカタイガーのスニーカー。ハラルの認証ももっと進めていかなければならない」と話し、マーケットに合わせた地域の商品構成が必要になってくるとの考えを披露した。また、情報発信の重要性も指摘。「高山市の観光情報サイトは多言語化が進んでおり、人口以上の外国人観光客が訪れている」との例を挙げ、相手の立場に立った情報提供に力を入れていくべきだとした。
最後に西川氏は「2000万人を達成しなければ、地域が大変なことになる」と危機感を表す一方、「それを達成できるだけの魅力やポテンシャルが地方にはある」と強調。そのためには、地域ごとの歴史伝統文化を今の時代に生かしていく必要があると説いた。