【弁護士に聞く】募集型企画旅行における宿泊税の扱いは?

  • 2022年4月21日

  「大手のパッケージツアーの販売などを行うリテーラー」をされている読者から、多くの実務上の疑問点をいただいた。いずれも味わい深いものなので、これから何回かに分けて順次答えやすいものから回答していきたい。

 大手旅行会社の募集型企画旅行では、宿泊税を旅行代金に含めているところと、別扱いにして現地払いにしているところがあると言う。後者では、宿泊税の計算根拠となる宿泊代金を示すことができないので、事前にお客様に宿泊税の額は知らせることができず、「宿泊施設で提示された額をお支払いください」となっているという。言外にではあるが、リテーラーとしてはお客様への説明が面倒のようである。

 いずれの扱いでも、法律上の問題はないのかと言う質問である。

旅行業者としての「法律上の問題」とは?

 日頃法律相談を受けている私の経験からは、旅行業者にとって法律上の問題とは殆どが旅行業法違反のことのみを意味している。しかし、実は、この質問のように旅行業者と顧客の間の問題は旅行契約の問題であるから、まず考えるべき法律上の問題とは企画・実施旅行会社の旅行業約款上の問題の有無である。旅行業約款とは旅行契約の契約書に当たるからである。旅行業約款上の問題の内容が確定したうえで、今度は旅行業法違反がないかを検討することになる。旅行業法は、旅行契約の内容を定めたものではなく、登録行政庁が旅行業者を監督、処分するための法令だからである。

 このことは説明を受ければ自明のように感じるかも知れないが、厄介なのは旅行業法の定めは旅行契約と交差し契約の解釈に影響を与える要素があることだ。例えば、旅行取引条件の説明義務と取引条件説明書面の交付義務(法第12条の4)や企画旅行の広告表示規制(法第12条の7)といった定めがそうだ。こうした定めを遵守して、適正な表示の広告を行い取引条件の正確な説明をしていれば、旅行業法違反の問題はないと同時に旅行契約上も問題はないことになる。しかし、こうした旅行業法の定めを遵守せず、法令の要求する事項を一部欠いた広告と取引条件の説明を行っていれば、それは旅行契約の内容にも影響を与える可能性がある。ただし、ここで注意しなければならないのは、旅行業法の定める表示事項を一部欠く広告をしたからといって、あるいは法定記載事項の一部を欠く取引条件説明書面を交付したからといって、そのことから直ちに旅行契約が無効になるものではないし、旅行契約に瑕疵が生じるものではないということである。旅行契約の内容は、旅行業者と消費者間でなされた具体的な口頭、書面を合わせてのやりとりで解釈されるものであるから、極端に言うと取引条件説明書面の交付を忘れたからといって、旅行契約には全く影響のない場合もありうるのである。その意味で、約款上(旅行契約上)の問題と旅行業法上の問題は分けて理解する必要がある。

 (実は、さらに厄介なことに広告表示は景表法の所管でもあることから、消費者庁と公正取引委員会が絡んでくる問題でもある。)

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