訪日旅行再開に向け、今旅行会社がやるべきことは?途中離脱対策やSDGs対応など考える-JATA経営フォーラムより
PCR陽性者の途中キャンセル対応など、旅行者フォローの仕組みづくりを
富裕層旅行やSDGs、MICE、スマートトラベルにも注目
訪日旅行受入再開まで5つのフェーズ、受入事業者の意識調査も
パネルディスカッションでは黒澤氏がJATA訪日旅行推進委員会としての活動を報告。委員会内で「ウイズ・ポストコロナの訪日旅行に向けたワーキンググループ」を立ち上げ、訪日旅行復活の想定やそれに基づいた対応策を検討していることを明かした。ワーキンググループの座長を務めた磯氏によれば、グループでは「管理型旅行による訪日旅行の再開」「インバウンド旅行客受入再開に向けた受入側の意識調査」「旅行業における新型コロナウイルス対応ガイドラインの作成」の3つのテーマに取り組んでいるという。
こうしたことを踏まえ、黒澤氏は「訪日インバウンド復活に向けたシナリオ」として、5段階のフェーズを説明。0フェーズとして、GoToトラベルキャンペーン等を通じた国内の広域移動活発化により、先に課題として挙げた観光客受入の心理的障壁の緩和をあげた。
フェーズ1は実証実験の再開と課題の抽出・解決を実施。フェーズ2では安全が確認された国からの段階的なビジネス・観光の受け入れを開始し、特にレジャー目的の富裕層の行程管理型グループツアーが主力となる見通しだ。フェーズ3では訪日対象国の段階的拡大と入国後の規制緩和条件の柔軟な運用・段階的緩和、フェーズ4は制緩和再上位ランク国からFITの受入開始と続く。ただし、具体的な時間軸は不明のままとした。
訪日旅行復活に向けコンテンツを用意、SDGsやアドベンチャーツーリズム
パネルディスカッションの後半では、訪日旅行復活を見据えて関係者が取り組むべきことは何かをテーマに議論が交わされた。黒澤氏は、JTBグローバルマーケティング&トラベルが昨年11月から12月にかけて海外の旅行会社に対して実施したアンケートを紹介。訪日旅行再開の条件で最も重要なものは何かを聞いた質問では、旅行中にPCR検査の陽性反応が出た、または濃厚接触者となって途中離団する場合のキャンセル既定の明確化があげられた。黒澤氏は「受入側にとって柔軟性をもって対処することがとても重要になる」とした。これについては磯氏も同様に、コロナを要因としたツアーキャンセルの際の取消料対応を課題として挙げ、対応するための体制構築の必要性を説いた。
今後日本に力を入れてプロモーションしてほしいことを尋ねた質問では、ゴールデンルートのツアーがトップだったが、ウェルネスツーリズムやアドベンチャーツーリズム、サステイナブルツーリズムなども一定数求める声があり、黒澤氏は「いくつかのテーマ別に沿ったツーリズムをしっかりプロモーションしていく必要がある」とした。
ちなみに、JNTOでも2022年度はテーマ別旅行に取り組む方針を示しており、JNTOの奈良裕信氏によれば、重点分野に「高付加価値旅行」「サステイナブルツーリズム」「アドベンチャートラベル」を掲げているところ。黒澤氏はこのうち特にサステイナブルツーリズムに焦点を当てて言及した。海外旅行会社向けのアンケートでも、6割がSDGs達成のためのサステイナブルツーリズムを重視しており、特に地方の文化などの体験、カーボンオフセットといった環境保全活動に注目しているとの結果が出たという。