中小旅行会社の生き残り策は事業拡大?新規事業?3社の事例から考える-JATA経営フォーラム

将来の訪日や海外発海外に活路
カフェや保育園など新規事業で会社を継続

 日本旅行業協会(JATA)が3月末までオンライン開催中の「JATA経営フォーラム2022」。分科会のうち、「コロナ禍に立ち向かう中小旅行会社の取組み」と題した分科会Dでは、フェロートラベル、フィンコーポレーション、クルーズのゆたか倶楽部の独立系中小旅行会社3社が登壇し、ポートフォリオの変革による事業拡大や、事業再構築補助金を活用した新規事業の展開など、各社の取り組みを語った。

分科会Dの様子
【パネリスト】
フェロートラベル 代表取締役社長 水澤史氏
フィンコーポレーション 代表取締役社長 美甘小竹氏
クルーズのゆたか倶楽部 代表取締役 松浦賢太郎氏(旅の専門店連合会九代目会長)
【モデレーター】
ビーエス観光 代表取締役 水野剛氏

本業強化、訪日や海外発海外視野に事業拡大-フェロートラベル

フェロートラベルの水澤氏

 分科会では、海外のスキーツアーやトレッキングなど、スポーツツーリズムに特化した旅行会社であるフェロートラベルの水澤史氏が、コロナ禍での自社の取り組みを紹介した。同社は事業のほぼ100%が海外事業で、直接仕入れ・直販で展開しており、顧客のリピーター率は約67%。水澤氏は「『マーケットありき』が私の考えであり、常に経営判断の重要課題・材料にして事業を展開してきた」と語り、コロナ禍でもマーケット・リサーチを怠らず継続してきたことを語った。加えてサプライヤーや顧客との関係の維持が自社の強みであり重視しているとし、サプライヤーや観光局などの協力のもと、2020年から屋外イベントやオンラインとのハイブリッドイベント、セミナーなどを多数開催し、それぞれとコミュニケーションを取り続けてきたことを紹介した。

 現在は国内旅行を中心に事業を展開中だが、水澤氏は「レベニュー・売上利益とも3分の1からよくて半分。補填する事業にはなりえない」と厳しい見方を示した。ただし、「リピーター層の体力とモチベーションの維持、顧客同士のコミュニケーションの場を創造する必要がある」ことから、国内旅行は継続しているところ。加えて「次世代、特にキッズファミリー、リバイバル層の再構築に役立てるとともに、来るインバウンド事業への準備・システムの構築」にも役立てており、スタッフのモチベーションの維持・向上にもつながっているという。

 さらに、水澤氏は旅行事業の継続と発展のため事業ポートフォリオの変革を実施。「スポーツツーリズムだったら世界に通じる会社にしたい」との考えから、海外事業・国内事業に加え、インバウンド、さらに海外発海外旅行のようなマルチナショナル・トランスナショナルのビジネスモデルの実現をめざす方針を述べた。特に2026年のミラノ・コルティナ冬季五輪について、アジアの第3国から欧州、北米への需要に期待を示し、「(スポーツツーリズムにおいて)欧州とは一番日本がサプライヤーとコミュニケーションをはかってきた。ジャパンモデルが世界に通じると思っている」と自信を示した。

 このほか、同氏は「一番大事なことは人材組織」とし、毎月20日に全社員に会社の状況を説明し、経理部門のデータを開示するなどの情報提供をおこなうとともに、社員に自己実現を呼びかけ、社員が自分に適した選択ができるようにしてきたことを説明した。同社の場合、コロナ1年目は社員の雇用を維持したが、2年目はレイオフ(一時解雇)するケースも出てきたという。今後は正社員のみならず、契約社員、パートタイマー、アルバイト、季節雇用など、さまざまな形での雇用形態を模索しながら、組織を再構築する考えだ。