中小旅行会社の生き残り策は事業拡大?新規事業?3社の事例から考える-JATA経営フォーラム
将来の訪日や海外発海外に活路
カフェや保育園など新規事業で会社を継続
『北欧』テーマはぶれず、イベントスペースなど新規事業-フィンコーポレーション
続いてフィンコーポレーションの美甘小竹氏がコロナ禍における新規事業について語った。同社は北欧に専門特化した旅行会社として1983年に創業。「フィンツアー」ブランドを展開するとともに、「ノルディックジャパン」としてオーロラ商品を中心にツアーオペレーター業務も実施してきた。同氏によれば、コロナ後は雇用調整助成金を活用して社員の雇用を守るとともに、資金調達で銀行からの借入を実施。社内組織を「オンライン事業」「業務環境の整備」「リアル旅」の3つのセクションに再編成して事業を継続した。
オンライン事業では海外取引先と連携してオンラインツアーを実施するとともに、オンラインイベントチャネル「フィンライブツアーチャンネル」を開設。現在はオンラインショッピング、社員研修、オンライン卒業ツアーなどコンテンツの幅が広がってきたという。業務環境の整備についてはテレワーク用のシステム導入、クラウド化・ペーパレス化に取り組んだ。リアル旅については国内旅行に取り組んだが、仕入れルートがない状態からのスタートだったことから苦戦。規模を縮小し、産業雇用安定助成金制度を活用して社員を他企業に出向させている。
美甘氏は「コロナ禍になって最初に心がけたのが社員の漠然とした不安をいかに取り除くか」と語り、経営悪化の状況も踏まえ、可能な限り社員に情報を提供したことを語った。出向についても、スタッフ同士が気持ちを共有できるようにと、まとまった人数で出向できるところを探したといい、「スタッフ同士の横繋がりができてチームワークがアップしているのが1つの成果」と話した。
また、同氏は顧客とのつながりを保ち、そのニーズを知るためにSNSでの発信を継続してきたことを説明。顧客からの反応から「海外に行けない状態でも北欧の文化との触れ合いを求めるニーズがしっかりと存在していることを実感した」という。同社ではこうした北欧へのニーズの高さや、自社の強みである北欧への知見などを踏まえ、新規事業の開始を決定。第2回事業再構築補助金を活用し、北欧文化に触れることのできる多目的スペースの運営をスタートする。具体的にはカフェ、カルチャースクール、ショールームやイベント、北欧関連企業とのコラボレーションを計画しており、北欧ファンを育てるとともに、将来の旅行需要につなげたい考え。社員と新事業を共に育てていくという思いから、店名やロゴは社内公募を実施した。
美甘氏は「地域専門の旅行会社、オペレーター、駐在経験豊富な社員、現地とのつながり、SNSのフォロワーといったものを突き詰めると、リアルであれオンラインであれ、自分たちのすべきことが見えてきた」と振り返った。申請の際は「自社の強みを見直して活かせること、集客収益が見込めること、本業復活の際にシナジー効果を作り出せること、社会貢献を念頭に分析と目標を設定した」という。
コロナとの共存めざし、英語教育型保育園を開設-クルーズのゆたか倶楽部
1984年、日本初のクルーズ専門旅行社として創業したクルーズのゆたか倶楽部も、第2回事業再構築補助金を活用して新規事業をスタートさせる会社の一つだ。同社代表取締役の松浦賢太郎氏によれば、事業ドメインの9割がクルーズ事業のクルーズのゆたか倶楽部の場合、2020年度の売上は19年比90%減、21年度も75%減。こうしたなか、同社では21年に2度目の緊急事態宣言が発令された際、「アフターコロナは考えず、コロナと共存するため」に2つの戦略を考えたという。