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需要が戻るまでいかにマーケットを保たせるか―横浜観光コンベンション・ビューロー 青木思生氏(後編)

  • 2022年1月24日

鍵は「宿泊の獲得」
都道府県の中で戦う「市」、東京より高くても選ばれる街に

 コロナ禍を受け、国内需要の取り込みに舵を切った横浜観光コンベンション・ビューロー(YCVB)。横浜と言えば知名度は抜群で、観光プロモーションの必要もないように思われるが、実は「かなり緻密に計画を練って戦略的に動いている」という。インタビュー後編では、他エリアとの連携や横浜の観光が次に目指す姿を聞いた。(前編はこちら

YCVB誘客推進課長兼経営企画部企画課長 青木思生氏

-他のエリアとも積極的に連携しておられます。

青木思生氏(以下敬称略) 過去には鎌倉や箱根など県内の自治体とも連携していますし、今は渋谷とも話をしています。いずれも目的は「宿泊を獲得できるかどうか」。例えば鎌倉の場合は、横浜にはない日本の伝統文化を鎌倉で体験し、宿泊はホテルがたくさんある横浜に戻ってきてもらうという考えです。箱根の場合は、同じ神奈川県内で「温泉がある場所」と「空港が近い場所」という組み合わせで、双方で宿泊を獲得していこうと意見が合致しました。

 渋谷については、電車1本で行き来できる優位性を活かしてコンテンツ開発とプロモーションを行い、交流人口を増やしていきたいと考えています。一方で、簡単に来られるということは簡単に帰れるという危うさも含んでいます。宿泊やリピーターを獲得するためには、クオリティとバリューのバランスを取りながら、他都市よりも良いものを提供していく必要があります。

 我々が目指すのは、たとえ東京にある同一ブランドのホテルよりも高くても横浜が選ばれるよう、地域の価値を引き上げることです。以前のように、「東京のホテルが空いてなかったから少し安い横浜に泊まる」というパターンでの誘客ではなく、街の環境や観光資源に魅力を感じる人に泊まってもらいたいと考えています。

-地域の価値の向上に必要なものは何だとお考えですか。

青木 横浜の認知度は高いですが、認知度と需要は比例しないと強く感じています。横浜は、中華街のような例を除けば、何をして、何を食べて、何を買えばいいのかが分かりにくい観光地です。需要を取り込むためには、「認知」で終わらせず、「関心」を引き上げ、次に「欲求」に繋げなければなりません。今はその「関心」に着手しています。

 例えば30代以上の方ですと、横浜は「デートする場所」のイメージがあると思いますが、実は20代の方はそうではないんです。そこで若い世代向けには、クリスマスやバレンタインなどのイベント、プロポーズや結婚式などの大事な記念日に横浜に来てもらえるような仕掛けを考えています。こうして横浜が特別な場所になると、リピーターになってくれる可能性も高まり、将来の需要にも繋がります。

山手に建つ洋館エリスマン邸(画像提供:横浜観光情報)

 「Find Your YOKOHAMA」キャンペーンでは、レトロな建物を巡るツアーが人気を博しています。横浜には古い洋館や昔ながらの純喫茶、ジャズ喫茶などがたくさんあり、ハマトラ世代の方がお子さんやお孫さんに「昔ここで遊んでいたんだよ」と話ができるようなお店も残っているので、そこにフォーカスを当てた紹介もしています。また、YCVBのサイトでは毎年ホテルのアフタヌーンティーを特集していますが、昨年頃からアクセス数が大きく伸びています。

 常にアンテナを張り巡らせ、「この需要が伸びるのでは」というポイントをキャッチアップし、イノベーターを捕まえて発信してもらい、メジャー化していく。この繰り返しです。広報チームはテレビ局に持ち込み営業もします。ディレクターさんも企画に悩んでいることが多いので、「企画作りは我々がやります」というメディアリレーションを長年続けています。