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公認会計士が教える会計知識vol.9 紙? デジタル? 電子帳簿保存で押さえるべきポイント

電子化をするうえで絶対に知っておくべきポイント

 電子帳簿保存法が改正されることにより、書類の保管方法のデジタルシフトがより進むと思われます。一方で、結局どうすれば良いのかがわからないという声を聞くのも事実です。 ここではそんな方々に、これだけは知って欲しい点を解説します。

ポイント1:紙で入手→紙か電子で保存を。電子で入手→電子で保存を。

 電子で入手した書類を紙に印刷して保管をしても、2022年1月からは正式な証憑として認められません。あくまでも「電子」が正式な書類になります。

 紙で入手した書類は、今まで通り「紙」で保存することも認められています。どうしていいかわからない方々は、紙で入手した書類に限り、「紙のまま保存」でOKです。

 もし、紙で入手した書類を電子で保存したい(紙は廃棄したい)という方々は、「読める状態での保存と、検索可能性を担保する」ことをお忘れないようにされてください。データでみても識別できない解像度の粗さや、税務署等に指示をされ、すぐに見つけられない状態では、電子保存を否認される可能性がありますので、ご注意ください。また、保存までの期間「約2ヶ月と概ね7営業日以内」の電子保存も必要な要件となりますので、この点も注意が必要です。

ポイント2:電子データの保存場所は継続利用しないとあとで大変なことに・・・。

 最近のクラウドツールは、改正電子帳簿保存法の影響もあり、「このツールを使うと、電子帳簿保存法の要件を満たし、証憑の電子保存が可能です!」とよく目にします。私は「本当にそれだけで大丈夫なの?使い方を間違うと対応していないことになるのでは・・・?」と気になっていました。

 そしてやはり落とし穴があると思っています。どのクラウドツールであれ、そのツール内にデータを格納した場合、電子データを別のツール等に移行するときの対応(エクスポートなど)は想定されていないような気がしています。すなわち、一度そのツールを利用して電子データを保管し始めると、他のツールへの移行は非常に困難なのではないかと思われます。 そのため、どのツールを利用した電子データの保管が会社に合致しているのかを慎重に検討することが必要と思います。

電子化は必須なのか

 電子化は必須ではありません。いままでのやり方で運用することも問題ありません。ただし、2022年1月からは、電子で入手していたものを紙出力しても証憑として認められませんので、まずはこれを電子データで保存することが必要になります。

 ただし、時代のながれにうまく乗ることを考えると、遅かれ早かれ会計・税務書類の電子データ保存は必要になってくるかと思いますので、ぜひ前向きな検討が良いのではないかと、個人的には思います。

改正電子帳簿保存法によりすべてを電子保存するときに意識すること

 それは、月次決算をしっかりとすることです。月次決算をするための関係証憑の電子化も1ヶ月から2ヶ月以内に完了していれば、紙資料を電子化し、紙資料を廃棄することも可能となります。。

 紙で受け取った請求書や領収書のデータ化期限は、「約2ヶ月と概ね7日以内」となっています。この期限内に電子化が行われ、これを会計データとして保存されれば改正電子帳簿保存法の要件にもひっかかることなく、電子保存が可能となります。

渡邊勇教
公認会計士。邊勇教公認会計士・税理士事務所、ゼロベース代表
北海道帯広市出身。立命館大学卒業後、監査法人トーマツに入所。2011年に公認会計士登録。その後、渡邊勇教公認会計士・税理士事務所(かぜよみ会計事務所)設立。2018年に業務改善や財務コンサルティング、他士業との連携サービスを提供するゼロベースを設立。また、渡邊勇教公認会計士・税理士事務所の代表しても法人・個人の各種確定申告などもおこなっている。