公認会計士が教える会計知識vol.9 紙? デジタル? 電子帳簿保存で押さえるべきポイント

 公認会計士の渡邊勇教が、トラベルビジョン読者のみなさんに、ビジネスパーソンとして知っておいて頂きたい会計に関する基礎知識を連載でお伝えする本コラム。9回目の今回のテーマは「電子帳簿保存法」です。

電子帳簿保存法の概要

 電子帳簿保存法とは、各種の税法で原則、紙での保存が義務付けられている帳簿書類について、一定の要件を満たした上で電磁的記録(電子データ)による保存を可能とすること及び電子的に授受した取引情報の保存義務等を定めた法律です。電子帳簿保存法における電磁的記録による保存は、大きく分けて3つの種類に分類されています。

参考:国税庁HP

 上記の①から③を補足すると次のようなイメージになります。

内訳内容主な書類
①電子帳簿等保存自らが一貫してコンピュータを使用して作成した書類・決算書、仕訳帳、総勘定元帳
・領収書(控え)、請求書(控え)
 発注書(控え)など
②スキャナ保存相手から紙で受け取った書類・領収書、請求書、発注書など
③電子取引相手から電子で受け取った取引・電子決済、メールデータ、
 EDI取引など

電子帳簿保存法の目的とは

 会計・税務書類の電子化は、情報化社会が進むとともに社会がペーパーレス化へと進んでおり、会計・税務の分野においてもコンピュータを使用した帳簿書類の作成が普及してきているため、経済界を中心とした業界から、帳簿書類の電磁的記録(電子データ)及びマイクロフィルムによる保存の容認について、かねてから強い要望が寄せられていました。

 これらの要望に答えるべく、政府は、国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存制度等の創設等を行いました。「紙」は保管コストも検索コストもかかり、社会の変化にマッチしておらず、これを時代背景とマッチさせるために「電子的な保管を良しとしよう」ということが、電子帳簿保存法のシンプルな目的です。

電子帳簿保存法の目的とは

 ここでは、2022年1月より施行される「改正電子帳簿保存法」の内容を簡単にご紹介いたします。電子帳簿保存法自体は、以前よりある制度でした。しかし、改正前の電子帳簿保存法に基づき、上記①から③を紙ではなく電磁的記録で保存することの要件が非常に煩雑であり、適用を受けるのが難しい状態でした。これをズバッと改善したのが、2022年1月より施行される「改正電子帳簿保存法」です。主な改正点は次の内容です。

内容改正前
(〜2021年12月)
改正後
(2022年1月〜)
①電子帳簿保存(決算書、仕訳帳など)
税務署長による事前承認制度必要であった廃止され、不要に
(届出なく、電子保存が可能に)
システム要件8つのシステム要件システム要件が2つに限定
・関係書類等の備付け
・見読可能性の確保
②スキャナ保存(紙で受け取った領収書、請求書など)
税務署長による事前承認制度必要であった廃止され、不要に。
(届出なく、電子保存が可能に)
保存要件・レシートにペンで自書
・3日以内のタイムスタンプ
・ダブルチェック
・データと元本の突合検査
タイムスタンプのみ残り、これも要件緩和。それ以外は廃止に。
→訂正・削除履歴の残るクラウドに最長約2ヶ月と概ね7営業日以内に格納する場合はタイムスタンプ不要に。

 ③の電子取引は、要件の緩和というよりは、ルールの厳格化が進んだという印象でした。従来までは、メールなどの電子取引(例えばメール添付の請求書)は、これを印刷し保管することで「証憑」として認められていました。しかし、2022年1月以降は、電子で入手した取引データは、電子のまま保存することが必要となり、これを印刷等したことで電子データの削除は認められないこととなりますので、この点は注意が必要です。

 なお、電子取引は、主に以下のようなものが該当します。

・メール添付で受け取ったPDFの請求書データ
・ECサイトからダウンロードした領収書のデータ
・銀行口座の明細データやクレジットカード、QR決済などのキャッシュレス決済の明細データ
・クラウドサービスを利用した電子請求書や領収書

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