JTB、上期は本社ビル売却などで黒字転換、新卒採用再開も

  • 2021年11月21日
JTB代表取締役社長執行役員の山北栄二郎氏

 JTBが11月19日に発表した2022年3月期上期(2021年4月1日~2021年9月30日)の連結業績で、売上高が前年比38.5%増の1798億円に留まり、営業利益、経常利益ともに赤字となったものの、本社ビルなどの不動産売却で300億円を超える特別利益を得たことで純利益は67億円となって黒字に転換した。営業損益は331億円の赤字だったが、過去最悪となった前年度の711億円からは大きく改善した。

第2四半期連結業績(単位:億円)

項目21年度20年度19年度
売上高1,798億円1,298億円6,860億円
営業損益-331億円-711億円64億円
経常損益-260億円-580億円69億円
純利益67億円-782億円44億円

 記者会見で代表取締役社長執行役員の山北栄二郎氏は、この結果について「非常に大きな傷みを伴う改革を進めてきている」とし、不動産売却に加えて構造改革の成果と、注力しているソリューション事業の増収と赤字幅の縮小などが奏功して黒字化したと語った。

 事業別で見ると、旅行の売上高は前年比14.8%増の867億円となったほか、MICE事業が84.7%増の138億円と伸長。その他事業も69.3%増の793億円となった。

 旅行のうち国内旅行は571億円で43.0%増となった一方、海外旅行は95.3%減の10億円。訪日旅行は894.4%増の277億円、グローバル旅行事業は92.4%減の8億円となった。2019年度と比較すると、国内旅行は78.5%減、海外旅行は99.6%減と苦戦が続いているのに対し、訪日旅行は26.3%減となっている。

 こうしたなか、新中期経営計画で今期から全体を「ツーリズム事業」と、観光関係業者や行政、DMOをターゲットにした「エリアソリューション事業」、一般企業をターゲットとする「ビジネスソリューション事業」の3つに再編。上期では、ビジネスソリューション事業での法人の会議・イベント運営などが好調に推移して売上高を押し上げた。また、エリアソリューション事業でも、観光地の整備や運営支援に取り組む事業が堅調に推移した。

 3事業の売上総利益に占めるシェアは、2019年度にはツーリズムが57.4%、ビジネスソリューションが13.3%、エリアソリューションが7.1%であったところから、2028年度にはそれぞれ48.7%、17.1%、15.1%へとすることを目指す。

 構造改革では、販管費をさらに圧縮。特に人件費は、2019年度に884億円であったところから2020年度は672億円とし、2021年度はさらに493億円にまで引き下げた。人員削減は、海外拠点での積み増しにより当初想定の7200名を上回る8170名減となった。

 さらに、国内グループ会社もすでに4社減少しており、年度内に2019年度末比で10社以上を縮小する。店舗も同様に115店舗の減少を計画しており、すでに上期で93店舗減となった。さらに、海外拠点は今年度末に216拠点を想定しており、19年度末の447拠点から半分以上削減する。

 人員については、今後の需要回復に向けて補充する必要性を認識しているといい、この一環として2022年度入社は見合わせた新卒採用を2023年度入社から再開する方針を決定した。

 このほか、純資産については、2019年度末に1572億円あったものが2020年度末には475億円まで減少したものの、資本増強と黒字化により860億円に回復。手元流動資金もソリューション事業の伸長で増加している。

 今年度の業績見通しについては、具体的な目標値は明かしていないものの、国内旅行は年度末に19年度並みに戻る可能性はあるとしつつ、12ヶ月間では7割程度の予測。海外旅行は年度内に一部の国から始まる可能性は想定しつつも、はっきりと数字の回復が見られるのは4月以降と見ているという。

売上高(単位:億円)

項目21年度上期20年度上期19年度上期
国内旅行571億円399億円2,656億円
海外旅行10億円219億円2,384億円
訪日旅行277億円28億円376億円
グローバル旅行8億円109億円529億円
旅行全体867億円755億円5,944億円
MICE138億円75億円314億円
その他事業793億円468億円602億円

売上総利益(単位:億円)

項目21年度上期20年度上期19年度上期
国内旅行162億円95億円535億円
海外旅行6億円52億円565億円
訪日旅行43億円15億円93億円
グローバル旅行3億円27億円91億円
旅行全体214億円189億円1,283億円
MICE61億円23億円70億円
その他事業252億円121億円124億円