【弁護士に聞く】「無料 フォトライブラリー」にご注意!

 「ただより高いものはない」とは良くいったものだ。インターネットのサービスは広告収入による収益で賄われるビジネスモデルなので、無料なのが当たり前になっている。その意識の緩さに付け入る商法が、問題となっている。

無断使用で強請る

 試しに「無料 写真」とでも入力してググると、実に多くの無料フォトライブラリーのサイトが見つかる。多くが、「無料写真素材を提供する『〇〇〇〇』のフリー写真素材は、個人、商用を問わず無料でお使いいただけます。クレジット表記やリンクは一切不要です。」と冒頭に表示されている。この文言に安心してはいけない。この誘い水の表現自体が実は曲者なのだ。「『〇〇〇〇』のフリー写真素材は」と言うからには、「フリー写真素材」ではない「有償写真素材」もあるという意味で理解しなければならない。実際に、サイトの中に入って行くとフリー写真素材に混じって有償写真素材が入っている。当然のことながら、「有償写真素材」の方が見映えが良く、目立つ。写真の説明を良く読めば、使用料が必要ということは判るのだが、最初から全て無料と思っていると写真の良し悪しにしか眼が行かず、使用料が必要な写真をダウンロードして使ってしまう。もともと「無断使用」させるのが敵の目的だから、ダウンロードの過程でも支払が必要といった表示はなく、実にスムーズに事が運ぶ(多くは事業者間取引になるので、電子消費者契約法による錯誤規定の保護も受けられない)。

 「有償写真素材」を自社のサイトにアップしたり、パンフ等の紙媒体に印刷して撒けば、使用許諾を受けずに著作物たる写真を使ったということで著作権侵害になる。ある日突然、「有償写真素材」の著作権者から管理を委託されたという法律事務所から厳しい警告と損害賠償の請求の文書が内容証明郵便で届く。通常、無断使用の損害なるものは最低でも使用料の3倍はするから手痛い出費だ。そのうえ、サイト上で使った場合は削除すれば済むが、紙媒体の場合はその回収まで義務となるので、それを避けるには損害の上乗せを認めるしかないことになる。

表現形式は全て著作権の対象

 写真、文章、イラスト、地図、振付け等表現行為は表現形式と呼ばれるが、全て著作権の対象たる著作物とみておくのが無難だ。「無難」という意味は、事前に使用許諾を要するか否かの判断の際には要すると判断すべきという意味だ。使用許諾を得ずに無断使用という請求の来たときは、そう簡単に請求を認める訳にもいかないから、「著作物性」につき専門家を交えて検討する余地はある。

 著作権法第2条1項は、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」としている。ここで難しいのは、「創作的に」という言葉だ。独創的にと理解する方が多いが、そんなに高尚なことは考えていない。他人の作った表現を模倣したものではなく、自分で創ったもの程度のことで足りる。この原稿も駄文かも知れないが、立派な著作物に当たる。今はスマフォが高度の写真機能を有していることから、スマフォによるスナップ写真など誰が撮っても同じとして著作物に当たらないのではないかという議論はあるが、少なくとも、どの範囲で被写対象を切り取るかという構成の創作性はあるので、創作物として、使用許諾が必要と解しておいた方が「無難」である。

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