取り残された海外旅行専門店の今-RT Collection 柴田真人氏寄稿

  • 2021年10月20日

 日本政府の海外旅行再開に向けての具体的なロードマップはまだありません。帰国後の待機期間が14日間から10日間になったものの、次のステップが6日間になるのか3日間になるのか、あるいは待機期間なしの0日間になるのか、見えてこないところが多々あります。また、待機期間は多少緩和さされたものの各旅行会社が参考にしている海外安全渡航情報についてはレベル3の国が多い状況が続いています。

 現在、海外旅行専門店ではこの難局を乗り切るために休業をしたり、スタッフの出社回数を大幅に減らすようにしています。その影響もあり、ホームページの更新や海外旅行情報の発信がストップしている状況です。現在、メディアを通して知ることができる海外情報は、各国の入国条件や入国後の待機日数の情報、トラベルバブルの実施など、どのようにしたら渡航ができるのかについての情報です。これらの情報は旅行者にとっても比較的入手しやすいものとなっています。

 海外のホテルとお仕事をさせて頂いている中で、現地のオペレーションが以前とは大きく変わっていることを実感しています。例えば、客室内に事前に設置されているアメニティは最小限にされ、必要なものがあればリクエストをしなければなりません。また、シュノーケリングやダイビングのアクティビティは実施ができても、他の島に上陸するアクティビティは実施ができないこともあります。リゾート滞在中に宿泊者はマスクを着用しなければならないのかどうか、こういった基本的な情報もホテルやリゾートによってはルールが異なっています。現地の旅行会社が関わるオペレーションでも変化が生じており、空港からの送迎車にガイドが同乗できないこともあります。

 このような情報は旅行者個人では入手することが非常に難しいものばかりです。そのため、旅行商品を販売する海外専門店の旅行会社や海外旅行を取り扱う旅行会社が、これらの情報発信を今後率先して行っていかなければなりません。しかし、このコロナ禍において、海外旅行専門店が営業日や営業時間の短縮を行い限られた出社人数の中で、現地情報を今後どのように収集して発信をしていくのかが、海外旅行市場再開のための課題の1つになってきます。また、旅行者は現地滞在に関する情報を事前にどこで入手して安心感を得ることができるのか、旅行者は観光地における飲食店やショッピングモールの営業状況、交通機関の運行状況、アクティビティの催行状況などを事前にどこで知ることができるのか、そういった場を改めて提供していくことが必要になってきます。

 帰国後の待機期間が0日間になったとしても、今まで休暇の度に海外旅行をしていた旅行者がすぐに動き出すとは思えないため、現地の状況をしっかりと伝えて、定期的に更新していくことが大切になってきます。海外旅行の再開の目途が立った段階では、海外専門店のスタッフが現地視察を行うことや、海外支店のあるランドオペレーターが情報発信を積極的に行うことが必要になってくるでしょう。

柴田 真人 / Masato SHIBATA
大学生時代にオーストラリアのタスマニア島で過ごし、旅行会社に就職。15年間の旅行会社勤務時代には主に東南アジア方面の仕入れや企画に従事。また、フィリピンでの5年7ヵ月間の海外赴任を通して、アウトソーシング事業の立ち上げからインバウンド事業における現地支店の立ち上げ及び日本マーケット初のチャーター便運航のプロジェクトなどを経験。その後、2018年に合同会社 RT Collectionを設立。