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【コラム】サントリー新浪社長の「45歳定年制」に思う

  • 2021年10月9日

 サントリーホールディングスの新浪剛史社長が「45歳定年制」を唱え、物議を醸していることは皆さんご存知の通りです。

 政府機関や経団連でも要職を担う影響力のある方の発言のため、メディアもこぞって取り上げ、官房長官はすぐに「法律上60歳未満の定年禁止」「今年の4月からは70歳までの就業確保が企業の努力義務」と発信し、火消しに動きました。新浪社長の真意が何処にあるのか、提言の是非は別として、労使ともに働き方を見つめ直す時期にあることは間違い無く、その嚆矢となったことだけでも意味があると考えます。

 これまでの終身雇用制や生涯賃金の設定は、高度な成長が持続すること、企業間競争は原則国内、就業者の大多数は日本人、今の事業・仕事が数十年先も存続していることが当たり前だと思われていた高度成長期(1654年からの19年)に設計され、それ以降も大きく変わること無く今日に至っていると認識しています。

 高度成長と共に勃興期を向かえた観光産業は当然ながら旧来の認識や制度を下敷きとしたものであるため、他の産業と同じく、不整合や矛盾が生じているのは致し方ないところかと思います。

 厄介なのは、この不整合や矛盾を全員が納得する形で解決する方法が事実上無い事です。

 昭和の時代(~1989年)に社会人になった人は最も若い人で既に50代です。この世代の方に対して企業は当時「年齢とともに給与は上がるし、終身雇用を担保するから若い間は我慢しろ」と当たり前のように伝え、当人たちもそれを信じたから、若い間は我慢しました。一方、20〜30代の若手は年功序列や終身雇用の恩恵に預かれない(或いは望んでいない)にも関わらず、若いうちは能力や成果に相応しい評価・報酬を得にくいのが現状です。また、時間をかけて習得した知識や技術の一部が直ぐに役に立たなくなる、今後ますますその傾向は強まる事、これは世代を問わず向き合わざるを得ない不都合な真実です。

 おそらく大半の日系企業においてはこれらの矛盾の皺寄せが「若手」に偏重していると思われます。少なくともここを解決しない限り、観光産業全体・企業引いてはそこで働くあらゆる年齢層の方に不利益が生まれるのでは無いでしょうか。筆者も50代後半なので自分の首を締めることになりますし、各方面から批判が出そうですが、敢えて私案を書かせて頂きます。

 報酬と成果が見合っていないベテランの配分を薄く広く減らし、それを原資として「優秀な若手」限定にて報酬も権限も大幅に増やす。一方ベテランに関してはその方の能力やパフォーマンスに相応しい報酬にアジャストすることを前提に「定年制」そのものを無くす。

 結論、45歳だろうと何歳だろうと定年制そのものが不要。

岡田直樹
㈱エフネス代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人。27歳でエフネスの前身㈱ルゥエストを創業し、31周年にあたる今年に至る。旅行素材のホールセール、観光関連企業への決済サービス提供、緊急対応代行、業界誌トラベルビジョン運営等々、主に観光産業内のB2B事業に携わる。
㈱ティ・エス・ディ代表取締役、一般社団法人インバウンドデジタルマーケティング協議会理事、㈱ミックナイン社外取締役​