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地域と人で新しい観光を作る-KIBOTCHA 三井紀代子氏、インアウトバウンド仙台・松島 西舘保宗氏

-KIBOTCHAのコンセプトを教えてください。
防災室内パーク。小さな子どもがアスレチック感覚で遊びながら防災を学ぶことができる。企業研修のチームビルディングに使われることも。

三井 コンセプトは「防災を軸に遊びながら学ぶ」です。座学で防災を学んでもなかなか身に付きません。遊びながら汗をかき、そのなかで一歩踏み出して挑戦する体験ができる施設にしようと、KIBOTCHAは「総合エデュテイメント施設(※)」を標榜しています。(※編集部注:エデュテイメントは「教育(エデュケイション)」と「娯楽(エンターテイメント)」の造語で、遊びのなかで学びを提供する施設を指す)

 施設は被災した廃校をリノベーションしています。「学び舎」であるという説得力、そして実際に被災地に足を運んでいただくことで感じる説得力を大切にするためにこの選択をしました。

 お風呂や水回りを部屋毎に設置していないなど一般の宿泊施設とは違うこともあり、繁忙期と閑散期に大きな価格差はつけていません。ですが意外性を出したいので、レストランでは「学校で食べるのにこの料理はすごい!」と思ってもらえるようなコース料理を提供しています。

-KIBOTCHAに最も来てもらいたいのはどんな方でしょうか。

三井 お子さんと企業のグループです。お子さんの場合は大人の同宿はなしで、お子さんだけをお預かりしたいというのが本音です。ルールに縛られない環境のなかで、素のお子さんと生活をともにしてさまざまなことを伝えたい。こちらにもリスクはありますが、学校にもぜひチャレンジしていただきたいですね。

 企業の方々にはSDGsとは何か、地域の人と一緒に汗をかき、ともに行動することで掴んでもらいたいと思っています。例えば農業体験なら、収穫以外にも土を耕して畝を作る、マルチシートを張るという作業もあります。季節にもよるので、冬は牡蠣漁の船に乗ってもらったり、牧場で農耕や林業の仕組みを学んでもらったりもできたらいいですね。

-SDGsの話が出ましたが、具体的にはどのような取り組みをされていますか。

三井 例えば東松島市は鳴瀬牡蠣が有名ですが、養殖に利用する牡蠣棚を廃棄するのに漁師さんたちは毎年何十万円もかけています。それを観光資源として活用しようと、牡蠣棚に使われた竹を再利用して竹灯篭を作りました。この灯篭には震災犠牲者の鎮魂や復興支援への感謝の思いも込めています。さらに今は竹灯篭を最終的に竹炭にしてバーベキューの燃料としたり、畑に撒いて土壌改善に役立てるという循環にも取り組んでいます。

-仙台・松島エリアでのコロナの影響はいかがでしょうか。

西舘 仙台には宿泊と繁華街の要素がありますが、松島には基本的に宿泊事業者が多いので、そこに観光客が来ないと周辺の土産物店や飲食店にも影響が出ます。また松島に観光客が来ないと、さらにその周辺へも足が伸びないという連鎖が発生しています。町場の土産物店などは昔ながらの商店街で家族経営をしているケースが多いためまだ耐え忍んでいますが、ホテルの経営は非常に厳しいと聞いています。

三井 KIBOTCHAも大きく影響を受けました。コロナ前の稼働率は年間平均30%から40%で、繁忙期は100%稼働という状況でしたが、ここしばらくは以前の閑散期を下回る状況が続いています。合宿や研修にも向いた間取りにしているので、その顧客層がストップした厳しさもあります。

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