地域と人で新しい観光を作る-KIBOTCHA 三井紀代子氏、インアウトバウンド仙台・松島 西舘保宗氏

-需要回復期に備え、DMOとしてはどのような計画をされていますか。

西舘 東北はインバウンド後発組として捉えていますが、その分自然や古き良きもの、素の日本があります。その面から、ほかの観光地のように多くの旅行者がなだれ込むのはちょっと違うと思っています。自然や生き方を知って共感してくれるお客様がいらっしゃるのが双方にとって良いのではないでしょうか。

 インバウンドの誘致にもニーズに合う提案が必要です。結果的にキャンセルにはなりましたが、実は昨年も20件ほど新規のオーダーが入っていました。それだけ熱意ある方がいらっしゃるということですよね。

 当社は第2種旅行業の資格を持ち、ツアーオペレーターとしても動いています。既成のパッケージプランを売るのではなく、依頼を受けたらヒアリングをしてオーダーメイドで旅行を提案してきたいと考えています。旅行会社さんからも一般のお客様からもオーダーをいただきますが、どの会社とお付き合いするかより、どの方と一緒にお仕事をしていくかという点を大事にしたいと思っています。

-旅行会社はどのような関係を築いていきたいとお考えでしょうか。

三井 この町を知ってもらい、ともに商品を作っていけるような会社さんとパートナーシップを築いていきたいです。例えば先ほどのお子さんだけを預かるようなプランにも一緒に挑戦してくれるような。

 また、ぜひ教育旅行にも組み込んでほしいと思っています。私は被災地における防災教育は完了していると思っていて、次はこの地域だからこその感性をもって発信することが大切だと考えています。地域の方にも映像で見た方にも、震災の記憶は残っています。コロナ禍で精神的な価値が見直されるなかで、「感性から何かを届ける」ということを、この地域の教育旅行の新しい価値にしていきたいと思っています。ガチガチの教育ではない教育旅行を一緒に作っていきたいですね。

西舘 DMOとしてもコラボレーションはあると思っています。とはいえ、我々は大量送客は本意ではないので、地域のことを知り、理解して、リピーターになってくれるお客様を一緒にサポートしていけるような連携ができると嬉しいです。地域事業者さんに有益になるお話は積極的に受けていきますので、ご相談もお待ちしています。

-観光産業に従事する読者へメッセージをお願いいたします。

西舘 コロナ禍中、DMOとして、また旅行会社として、何のために仕事をしているのかという原点に立ち返りました。私たちは地域のため、地域事業者さんのために仕事をしています。忙しくなるとそこが薄れてしまいがちですが、今一度振り返ってみるのも良いのではないでしょうか。

三井 コロナによって各地域の未開拓だった良い場所がたくさん発見されたと感じでいます。そうした場所を国内外に発信していくために、ほかの地域事業者さんとも連携していきたいと思っています。独自性を打ち出していくのは地域事業者の努力が肝心だと思うので、惜しみなく力を注いて観光業界を盛り上げていきたいですね。

-ありがとうございました。