「日本のインバウンド旅行業界からのオープンレター」-HICJ代表アレックス・デベス氏

  • 2021年6月16日

 JATAへの公開書簡をきっかけに取材したインバウンド旅行会社一時(ヒトトキ)の代表で、インバウンド事業者の活動をサポートするHICJ(HOSPITALITY INDUSTRY CLUB OF JAPAN)の発起人でもあるアレックス・デベス氏が、このほど政府に向けて業界の窮状を訴えるレターを公開した。日本のインバウンド再興の担い手でありながら救済施策から取り残されているという中小事業者の現状を、再びデベス氏に聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)

一時代表、HICJ代表のアレックス・デベス氏
-HICJの概要と設立の動機を改めてお聞かせください。

アレックス・デベス氏(以下敬称略) インバウンドに関わる企業には規模の小さい会社や外国人経営の会社も多くあります。コロナ前からそういった企業に対する業界団体のサポート、情報提供は圧倒的に不足していると感じており、何らかのアクションが必要だとは思っていたのですが、日々の業務に追われ、なかなか具体的な行動ができませんでした。

 しかしコロナにより状況は激変し、インバウンド専業の事業者の売上はほぼゼロになりました。支援や英語も含めた情報提供を渇望していたのですが、残念ながら業界団体にそういった動きはなく、このままでは何も変わらないし生き残ることもできないと判断して、個社ではなく同じ境遇の会社や個人が集う場として昨年秋にHICJを立ち上げました。以来会員同士の連携を深め、現況や要望を発信するバイリンガルグループの活動を本格化しています。

-活動内容や実績、メンバーについて教えてください。

デベス 現在メンバーは約60社、旅行会社やアクティビティプロバイダー、ホテル、ガイドで構成されています。年明けから会員間の情報・意見交換を目的とした定期的な「メンバーズ会議」、地域を知りコロナ後に活かすための観光地とのウェビナー共催、サスティナブルツーリズムをテーマとしたイベント等を行っています。

 またインバウンド関連事業者が活用できる雇調金を始めとした補助金の情報を英訳した資料を作成し、会員に喜んでもらっていますが、本当はこのようなことは業界団体にやってほしいという思いもあります。

-「日本のインバウンド旅行業界からのオープンレター」について、概要と公開された目的をお聞かせください。

デベス HICJのメンバーに先日アンケートを行ったところ、今のままでは約3割が年を越せない、約6割が来年の春頃には事業を停止せざるを得ないとの回答で、すぐにアクションを起こす必要があると考え、オープンレターに踏み切りました。(アンケート結果はこちら

 レターでは中小規模のインバウンド関連企業の窮状を伝えるとともに、ホスピタリティ産業従事者へのワクチン優先接種、ワクチン接種済みの方への隔離の撤廃、自由な往来再開に向けた「カレンダー」の設定、インバウンド関連企業に対する直接的な支援などを求めており、菅首相、赤羽国土交通大臣、蒲生観光庁長官に送る予定です。(レター全文はこちら

 タイでも主にホテルとレストランからなる業界グループが政府にオープンレターを送り、ワクチンの優先接種や今後の往来再開施策スケジュールを作ってほしいと要請した結果、プーケットでは7月から外国人観光客の受け入れ開始を予定しています。日本でも同じような取り組みが必要ではないでしょうか。

-読者へのメッセージをお願いいたします。

デベス 日本の良さを外国から来たお客様に伝え、実感してもらうためには、インバウンド専業の小規模企業、母国語でコミュニケートできる外国人経営の会社、ホスピタリティに溢れる経験豊かなフリーランスのガイドなどが不可欠です。もし趣旨にご賛同いただけるようでしたら、これらの方々がコロナ収束後の日本のインバウンド再生に力を発揮できるよう、是非オープンレターへのサインをお願いします。

-ありがとうございました。