沖縄観光は量も質も追求、県民が豊かさを実感できるように-沖縄観光コンベンションビューロー会長 下地芳郎氏
21年度は最悪シナリオでも500万人目指す
受入環境も万全、「ぜひ沖縄にいらしてください」
2018年度に入域客数1000万人を記録した沖縄をコロナ禍が直撃。2020年度は客数が4分の1まで激減した。そこから沖縄観光をどう立て直すのか。観光復活の司令塔役を担う沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)会長の下地芳郎氏に、沖縄観光の現状と復活への道筋について伺った。(聞き手: 弊社代表取締役社長兼トラベルビジョン発行人 岡田直樹)
下地芳郎氏(以下敬称略) 昨年は3月に那覇空港の第2滑走路が完成し大きな期待がありました。それまでは滑走路が1本だったため空港は満杯で、航空便の遅延が常態化し外国航空会社の受け入れも難しい状態でしたが、2本目の滑走路の供用開始を機に国内・国際路線の強化を進める考えでした。
クルーズについても沖縄には受け入れ可能な港湾が、本島の那覇港、中城港だけでなく宮古島と石垣島にもあるのが強みです。クルーズ受け入れは課題もありますが、客数をさらに伸ばせる受け入れ環境がありました。加えて宿泊施設もラグジュアリーホテルから民泊まで幅広く揃い、アジア圏を中心に沖縄への旅行需要も高まっていると感じていました。したがって2020年の躍進へ期待が大きかったのですが、残念なことにコロナ禍による打撃は非常に大きなものでした。
2020年を暦年で見ると入域客数は前年比6割減の373万人でしたが、年度で比較すると20年度は19年度比で約73%減の260万人まで落ち込み、観光消費額も7000億円から5000億円以上も減少し1900億円まで縮小してしまいました。観光産業への影響は甚大です。
一方で10月に「ツーリズムEXPO in沖縄」を開催できたのは明るい話題でした。コロナ禍以降、実際に人が集まる大規模な展示商談会を開催できたのは「ツーリズムEXPO in沖縄」が世界初とも報道されましたし、ニューノーマル時代のMICEとしてリアルとオンラインを組み合わせたハイブリッドMICEのあり方、スタンダードを世界に示せた意義は大きかったと感じています。
下地 インバウンドや県境またぎの旅行が無くなったことを受け、昨年夏には県内市場開拓を目的とする「沖縄“彩”発見事業」第1弾を実施しました。それまでは、宿泊料金が上昇する夏は特に県民にとって県内観光は縁遠い存在でした。そこで県民に観光費用の7割引の特典を提供し夏の観光需要の発掘に取り組みました。今年も3月10日には割引率を8割に引き上げた「沖縄“彩”発見事業」第3弾を発表し、旅行会社の前に行列ができる盛況となっています。割引率が大きすぎて反動への懸念が指摘されるなど課題はありますが、観光産業の下支えに貢献してくれていると見ています。