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沖縄観光は量も質も追求、県民が豊かさを実感できるように-沖縄観光コンベンションビューロー会長 下地芳郎氏

21年度は最悪シナリオでも500万人目指す
受入環境も万全、「ぜひ沖縄にいらしてください」


—21年以降の沖縄観光の目標を教えてください。
下地氏

下地 沖縄県としての目標値は発表していませんが、沖縄観光コンベンションビューローは独自に航空会社やホテル等に対してヒアリング調査をおこない、3パターンのシナリオに基づく目標を設定しています。シナリオ1は、ワクチンが普及し国内客が19年度並みに回復する前提で、国内客670万人の入域観光客数を目標としています。


 シナリオ2はワクチンの普及が滞り回復に想定より時間を要した場合で、国内客で600万人を目指します。シナリオ3はコロナウイルスの変異により、2020年同様に感染の波を繰り返した場合で、この最悪のシナリオ3でも国内客500万人という目標を掲げました。外国人観光客数については当初2021年度の目標を30万人に設定していましたが、現時点では航空路線の再開が見通せないことから保留にしています。

 いずれのシナリオも感染状況やワクチン接種の進行状況次第という面は否めませんが、国内外から沖縄旅行のニーズが高まっていることを実感しており、今後の状況をみながら改めて目標設定をおこないます。

 また航空座席供給が絞られてしまうと目標は実現できないので、航空会社に働きかけると共に、共同で需要回復キャンペーンに取り組んでいければと考えています。インバウンドに関しては、感染状況次第ですが、まずは台湾路線の再開をにらんで準備を進めていきます。

—目標達成のため、今後どのような取り組みを予定していますか。

下地 沖縄観光の回復に向けては、何よりも「安全・安心」な環境を作ることが最優先です。当面は、感染防止対策が中心になりますが、一方で沖縄観光の魅力発信はしっかりおこないたいと思います。 また大きな方向性は、観光客数の回復と同時に客単価上昇を図ることです。

 コロナ禍前の沖縄は1000万人の入込客数がありましたが、消費額が伸び悩んでいました。その結果、地元経済への貢献が感じられないという課題がありました。県民アンケートでも「観光客受け入れの重要性」は多くの県民が認めているのですが、「自分の生活の豊かさにつながっている」と感じる県民比率が少ない。一方で、交通渋滞など負の側面の顕在化を指摘する声の方が大きくなってきました。ですから今後は客数の回復だけでなく、観光客受け入れの成果を多くの県民が実感できる対策も進めていかなくてはなりません。

 県のGDPにおけるサービス産業の比率は高く、県民生活を支えていますが、それが目に見えづらい。現在のような状況では直接的な観光事業者だけでなく、クリーニング店や花屋さんまで幅広い事業が打撃を受けています。したがって観光産業の立て直しが急務ですが、沖縄には「観光産業が強すぎるのがよくない。他の産業をもっと伸ばすべき」との議論もあります。しかし私はそのような縦割りの産業振興ではなく、観光×バイオ産業とか、観光×ヘルスケア事業とか、観光との掛け算による産業の底上げと育成が必要だと考えます。

—客数だけでなく人泊数なども指標に取り入れる必要がありますね。

下地 その通りで、成果指標として人泊数を取り込んでいく工夫が必要になってきます。経済的視点ではそうなります。ただし一般の人には客数の方が分かりやすい面があって、両方とも重要と言えるでしょう。また言葉を換えれば、沖縄は今後、量だけでなく質の向上も追求していく。量も質も両方大切というのが我々の考え方です。

—GoToトラベルキャンペーン再開について、どのような期待がありますか。

下地 昨年のGoToトラベルキャンペーンは沖縄旅行需要の喚起にとても効果がありました。10月には客数が大きく伸びましたし、沖縄への旅行商品の単価は高く地域クーポンの額面が大きいので、ショッピングへの効果も大きく土産物店を元気づけました。

 GoToトラベルキャンペーンの再開に関しては、先ごろ沖縄観光コンベンションビューロー、商工会議所、経済同友会など経済団体会議(12団体)で政府や関係機関に要請をしたところです。観光消費額が県経済に占める比率が全国で最も高い地域は沖縄県であり、観光の回復なくして県経済全体の活性化はないということを伝えました。

—最後に伺いたいのは、沖縄の人々が島外からの旅行者の来訪を心から歓迎してくれるのだろうかという点です。コロナ禍を経て、観光の受け入れ地側の住民感情が変化しているとの見方もありますが。

下地 観光の復活を望まない者はいません。ただし昨年4月~5月にかけて、全国に非常事態宣言が発出された際に、地域の安全・安心を守るため各自治体の首長が、域外からの来訪を控えるよう要望するコメントを発信し、沖縄も同様でした。その印象が残っていると思われますが、現在は状況が違います。沖縄では感染対策ガイドラインに基づいて感染症の管理体制も整備され、空港での対策や沖縄県独自の接触確認アプリを活用した取り組みが進んでいます。

 旅行者の皆さまがご自身で体調管理をし、感染予防対策を徹底していただければ、沖縄へ来ていただくのは大いに歓迎です。出来れば旅行前にPCR検査を受けていただき、問題がないことを確認すればより安心して旅行を楽しめると思います。これからが沖縄の一番いい季節です。花粉もありません。ぜひ沖縄にいらしてください。

—ありがとうございました。