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生き残りをかけたOTAのサバイバルゲーム-OTAのビジネスモデルを分析する

成長に陰りもスーパーアグリゲータ戦略が次の成長ドライバーとなるか
ブッキング・ドットコムとエクスペディアはどちらが効率的な経営?

OTAの変遷、ビジネスモデル、脅威

 多くのOTAがドットコムバブルと呼ばれた2000年前後に生まれています。例えば、その時に出てきたOTAがプライスライン、エクスペディア等になります。彼らはマーケットシェア獲得のために買収攻勢をしかけることで大きくなりました。

 エクスペディアがOrbitz(オービッツ)、Travelocity(トラベロシティ)等を買収したのに対し、プライスラインがブッキング・ドットコム、アゴダ等を買収します。中でもブッキング・ドットコムの成長が著しく、プライスラインは「ブッキング」をホールディングス名にしてしまったほどです。もともとはプライスライングループとして上場していましたが、現在ではブッキング・ホールディングスとして上場しています。

 少し遅れて、2010年前後に、楽天トラベルやシートリップ(現トリップドットコム)のほか、インドのMakeMyTrip(メイクマイトリップ)、インドネシアのTraveloka(トラベロカ)、tiket.com(チケット・ドットコム)などが出てきます。この時期に登場したOTAは、中国(14億人)、インド(13億5000万人)、インドネシア(2億7000万人)など莫大な人口規模を持つ国で圧倒的なシェアを誇っています。それらのOTAは、人口やミドルクラスの成長に伴い、成長することが期待されます。日本の多くのホテルはトリップドットコムとすでに契約をしていますが、MakeMyTripやTraveloka、tiket.comなど今後の成長が期待されるOTAと契約をされることをオススメします。

図3. 世界のOTA

 次に、OTAのビジネスモデルを解説したいと思います。各社一様に下記のようなモデルになっています(図4)。簡単に言うと「マーケティングと仕入を両輪で回す」ということです。

 つまり、マーケティングにコストをかけて顧客を獲得すればするほど、購入が増え、市場シェアが高まります。そうすると、ホテルや航空会社への交渉力が増し、仕入交渉で優位に立ちます。結果として、安い料金を獲得出来たり、より良いリベートを獲得出来るようになります。それがまた顧客を引き付け、認知度が高まるため、広告にお金をかけなくても、検索をしてもらえる状態になります。結果的にマーケティングコストは下がっていくわけです。つまり、マーケティングが仕入を良くし、仕入がマーケティングコストを下げるわけです。

図4. OTAのビジネスモデル

 さらに、M&Aを駆使して競合を減らし、時には赤字を出してでもシェア獲得を優先することがあります。それだけ、プラットフォーマーとして市場シェアを獲得することが重要なわけです。なぜなら、それが認知度向上につながり、マーケティングコストを下げ、仕入交渉を優位に進めるわけですから。

 費用を多額に使って、たとえ赤字を出したとしても、それが長期的にはリターンとなって返ってくる、そういうモデルなわけです。

 しかし、OTAにも近年逆風が吹いています。上記で示したように、時価総額でもエアビーアンドビーに抜かれたり、ホテルチェーンにも拮抗もしくは追い越されるようになってきています。どういうことが起きているか解説していきたいと思います(図5)。

 上記で述べた通り、OTAは今までOTA同士での競争に注力をしていました。市場シェア獲得を優先していたわけです。そこにエアビーアンドビーに代表されるディスラプター(破壊者)が突如として現れたり、グーグル等のメディアの検索アルゴリズムが変わるたびにOTAの広告費が増大します。さらに今までは仕入パートナーだと思っていたホテルチェーンや航空会社は直販に力を入れ始めてきます。まさに四面楚歌の状態になっています。OTA側にもなかなか手立てがなく、利益率の低下に歯止めがかかっていないというのが現状です。

図5. OTAを取り巻く状況

 おそらく、今後OTA各社は、「バラバラになってると面倒なもの」を「さらに統合する」という方向に動いていくと思います。つまり、鉄道、アクティビティ(Klook等)、タクシー(Uber、Grab等)、旅行保険など旅行に関わる全ての商材を提供し、滞在時間を高めることで、購買を促す、スーパーアプリとかスーパーアグリゲータと言われる方向に行くのだと思います。ホテルチェーンはホテルを売る、航空会社は航空券を売るため、なかなか実現できないことですよね。

 すべてを統合しワンストップで提供できれば、もう一段の成長はあるかもしれません。ただし、これが難しいとなると、既存の競合OTAを含め、新規参入者、メディア、仕入先に顧客を奪われ続けることになるでしょう。アフターコロナで、各社一時的にOTAの強力な販売力を借りることがあるかもしれませんが、長期的にはこの流れは加速することはあれど、減速することはないと思います。

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