福利厚生から「事業力向上」のテレワークへ-JATA経営フォーラム
新型コロナ拡大の今こそ推進すべき時
多様なツールで単なる在宅勤務から脱却
湯田氏はテレワークの成功事例として、テレワークとは無縁に見えるある土木会社を紹介した。同社は08年から、工事現場で働く従業員が朝晩にオフィスで行っている事務作業を、スマートフォンや自宅のパソコンで実施。これにより従業員は自宅と現場を行き来するだけで済むようになり、労働時間だけでなくガソリン代やオフィスの光熱費なども削減することができた。削減したコストを従業員の給与に反映したところ、若い人材1名の募集に対して、600名もの応募があったという。テレワーク導入からの10年間で、同社の売上高は8億円から16憶円へと倍増し、社員数は20名から36名へと増加。このうち1名のみだった女性は12名に増え、スタッフの多様化も実現した。
湯田氏は、日本の労働人口が確実に減少するなか、テレワークを実施すれば女性やシニア、さらには遠隔地の人材の雇用が容易になり、介護などの理由で離職せざるを得ない社員もつなぎ留めることができると強調。週2日、1日3時間のみの勤務をオファーすることで社外の優秀な人材を集めることに成功しているベンチャー企業があることなども紹介し、柔軟な人材確保のためにも、テレワークという「基盤」を早期に整えておくことが必要不可欠と語った。
コロナ拡大でテレワーク実施回数制限を撤廃
続いて登壇したジャルパック総務部人事総務グループマネージャーの宮野浩臣氏は、同社におけるテレワークの導入と活用について紹介。宮野氏は冒頭で、ジャルパックが15年に日本航空(JL)のワークスタイル変革に連動する形で、「高収益体質への変革と個人の成長」に向けた働き方改革をスタートしたことを説明した。具体的には、16年に勤務時間帯の拡大、17年に在宅勤務の本格導入、18年に在宅勤務利用回数の上限拡大、19年にフレックスタイム制の本格導入を実施。現在は社員の73%がフレックスタイム制で働いているという。
テレワークについては、19年上期では平均して社員の2.7人に1人が、1ヶ月に2.6回実施しており、制度や環境を急速に整えたことで、実施者は右肩上がりに伸びているという。ちなみにこれまでは今夏の東京五輪に向けて「可能な範囲で推進」していたが、今般の新型コロナウイルスの感染拡大を受けた対応として、1週間あたりの回数制限を撤廃。「業務に支障がない限り、できるだけテレワークを取り入れるよう、トーンを上げている」という。
そのほかには、同社が現在、首都圏だけで70ヶ所のサテライトオフィスを持ち、通信面では約3年をかけてノートパソコンやスマートフォンへの切り替えを進めたことも紹介。18年には社員の自律的な働き方改革を推進する活動として「WHIP(Work and Holiday Innovation Project)」を立ち上げ、社内公募により集まった社員が4つの分科会を通して活動しているという。