観光局のプロが語る観光マーケティングのリアル、その現在地とは-IDMセミナー
B2CとB2Bの使い分け、旅行会社に課題も
JNTOのデジタル戦略は
旅行会社との協業には要望も
モデレーターはまた、デスティネーションマーケティングにおいてかつては一般的であったが現在は通用しなくなった施策と、逆に普遍的な施策についても質問。これに対して早瀬氏は、通用しないのは観光資料の閲覧スペースと答え、「今は口コミ、知り合いやフォローしているKOL(キーオピニオンリーダー)が言ったことが一番強い」と説明。そして「メディアの力は弱くなっているものの、メディアを含めた第三者からのエンドースメントが大事」と主張した。
一方、藤村氏は「情報をセグメントするのがポイント。正しい情報が求められているためメディアへの露出は普遍的であり必要」とコメント。また、「体験を含まない施策やストーリーのない商品は通用しなくなった」と訴える能登氏は、「最後に背中を押すためのリアルイベントは今も大切」とも語り、実際に実施した「現地でしかできないフィンランドサウナの模擬体験イベント」を例示した。
逆に効果が出にくい施策として、藤村氏は旅行会社とのプロモーションと回答。「20年前に入局したときから今も商品が変わっていない。タイは77県あり、地方活性化のためにも旅行会社に新しい商品をお願いしているがうまくいかない」と、旅行会社の姿勢の変化を要望。また、早瀬氏は「政府観光局は全世界で同じ広告キャンペーンを同じ施策でやりたい。その方が効率がよいためだが、日本に合わないものもある」と問題点を説明し、特にオンライントレーニングは「日本の旅行会社はほとんどやってくれない」と悩みを語った。
最後に、グローバルに展開する海外観光局ならではの課題は「予算の削減」と藤村氏は明言。「南アメリカなど新オフィス設置に予算を投下する一方、日本市場への予算は減る中でどうやっていくかが課題」とした。
これを受けて早瀬氏は「グローバル全体で日本などの伸びしろがない成熟市場と、必ず伸びる新興市場に投入するかは政治的な側面もある。国として伸びるところにお金を使えば責任者は責められないし、成熟市場にお金を出す勇気があるか、という判断は難しいところ」と話した。続けて能登氏は「以前はツーリズムのプロモーションが主な仕事だったが、今はオーバーツールーリズムのような問題を解決するためのマネジメントをする能力がないと通用しなくなっている」ことを指摘した。