観光局のプロが語る観光マーケティングのリアル、その現在地とは-IDMセミナー
B2CとB2Bの使い分け、旅行会社に課題も
JNTOのデジタル戦略は
一般社団法人インバウンド・デジタルマーケティング協議会(IDM)はさきごろ「IDMセミナー2019 各国政府の観光マーケティング/スポーツマーケティングを学ぶ」と題したセミナーを開催。日本政府観光局(JNTO)や国内男子プロバスケットボールリーグB.LEAGUE(Bリーグ)のデジタルマーケティング戦略についての基調講演のほか、日本でデスティネーションマーケティングを展開する海外政府観光局によるパネルディスカッションを実施した。ここでは主に海外政府観光局のマーケティング戦略についてのやり取りをレポートする。
「海外から学ぶ デスティネーションマーケティングとデジタライゼーション」と題するパネルディスカッションでは、ブランドUSA日本事務所などを請け負うアビアレップス代表取締役の早瀬陽一氏、フィンランド政府観光局日本事務局などを担うForesight Marketing代表取締役の能登重好氏、そしてタイ国政府観光庁(TAT)東京事務所マーケテイングマネージャー藤村喜章氏が登壇。モデレーターの質問に3名が回答する形で議論が進められた。
売れない演歌歌手を紅白に
「デスティネーションマーケティングの本質とは」の問い対して、能登氏は「どこを突破口かを決めるのが一番大事。やっていることは売れない演歌歌手のマネージャーのようなもので、最初のヒットを飛ばすまでが勝負。どうやってステージあげて、紅白歌合戦に出すかを常に考えている」と自身の仕事を例えた。早瀬氏は「基本はポジショニング」と回答、藤村氏は「絶対的なトップダウンのあるタイの組織では、副首相が急に来て10日間でピーアールイベントを仕立てるといった急な対応が求められるため、いろいろな人とのネットワーキングが重要」と述べた。
また、旅行業界を対象としたトレードマーケティングとコンシューマーマーケティングの使い分けについては、市場とデスティネーションの成熟度がポイントとして挙げられた。早瀬氏は「FITが少ないペルーは旅行会社と商品を作り、FITが多い成熟デスティネーションのサンフランシスコやニューヨークはB2C寄りになる」と説明。「流通の流れと、消費者がどれだけ成熟し、デスティネーションの知識があるかによって使い分けている」とも語った。
これについては能登氏も、「成熟デスティネーションのフィンランドの場合はSNSなどで消費者へメッセージを出すなど、情報の出し方における消費者と業界との境界はグレー」であると同調。一方、バルト三国は業界との協働を重視していると語った。また送客実績によって投資効果を測るという藤村氏は、「実績を考えるときは旅行会社とタイアップし、タイの認知(度の向上)をはかるとき、バンコク以外の知らないところを紹介するときは消費者向けになる」と述べた。