アマデウス、業界の未来に提言、テクノロジーが席巻も「ヒューマンタッチは存続」
アマデウスは10月31日、このほど発表した独自レポート「The Future of X」について東京で記者説明会を開催した。同レポートは、アジア太平洋(APAC)各国の業界関係者や旅行者などを対象とした数千人規模のアンケートをもとに作り上げたもので、「OTAの未来(The Future of Online Travel)」「業務渡航の未来(The Future of Corporate Travel)」などテーマごとに、アジア太平洋地域の旅行市場について現状分析や今後の見通しを示している。
会の冒頭、アマデウスでオンライントラベル担当エグゼクティブ・バイス・プレジデントとしてAPACのマネージング・ディレクターも務めるミーケ・デ・シェッパー氏は、「アマデウスのミッションは旅行の未来を形作ること」であると挨拶。そのうえで、APACはすでに世界最大の旅行市場となっていつつも更なる拡大が予測されるなか、旅行者のニーズや新しいテクノロジーがもたらす変化などについて考察したと説明した。
OTAの未来については、言うまでもなく急成長が続いており、モバイル端末の浸透や新しい決済手段の登場などにより「APACは特に急速に成長している」ところ。レポートによると、市場規模はオフライン市場に比べて5倍のペースで拡大しており、またAPACは他の地域よりも25%速く伸長しているという。ただし、大企業による中小企業の買収などの統合化や、コンテンツの情報過多と分断化などの課題もあり、またAIやビッグデータ、ブロックチェーンの活用、パーソナライゼーションなどもOTAの未来を左右すると指摘した。
こうした状況下では、他社との提携による成長を模索する企業も増えてきているほか、地場の小規模な旅行会社でもニッチなサービスや商品を扱うことで勝機を得ているケースが出てきているという。
また、続いて登壇したアマデウス・ジャパン代表取締役社長の竹村章美氏は、総合旅行会社と業務渡航系旅行会社、そして法人出張の未来について説明。総合旅行会社については、扱うコンテンツの質量やサービスのスピードなどの面で旅行者から要求されるレベルが高くなり「厳しい生存競争」にさらされているものの、「淘汰されるとは考えていない。テクノロジーですべて対応するのは不可能」と言明。その上で、変化を受け入れることが重要となると語った。
業務渡航については、費用対効果に対する目が厳しくなるとともに「状況変化に対応して、企業ニーズと出張者ニーズ両方に応えることが必要」と分析。そして「強力なテクノロジー」と「最先端のイノベーション」の活用が鍵であるとした。ただし、日本の業務渡航市場は約9500億円と世界最大規模であり、今後も増加傾向にあるとの予測も披露。アマデウスとしては課題解決を助けるため、直近の例では豪州企業Kudosと提携。出張者と旅行会社の双方に合わせてカスタマイズでき、コンテンツを一元的に集約することが可能なウェブプラットフォームで、パスポートやビザを自動アップロードして管理する機能なども開発しているという。
そして、法人出張の未来については、ブレジャーやワークライフバランスへの注目が高まるとともに、「効率だけでなく、出張体験が快適にならなければならない」と指摘。また、「音声認識が今後のキーワードになってくる」とも分析しており、例えば出張者からの電話に対して、音声で瞬時に個人を特定して出張手配を始められるようなサービスが求められていくという。
さらに竹村氏は、まとめとして「これからはテクノロジーがすべての物事を改善していく鍵となる」としつつ、「ヒューマンタッチは今後も必ず必要」と語り、「アマデウスは旅行の未来を牽引するためのテクノロジーを開発して前進していきたい」と意欲を示した。なお、プレゼンテーションのなかでは、テクノロジーの活用例として、Kudosのチャットボットの日本語化を検討していること、AIについてはすでに20以上のプロジェクトで旅行会社のサービス拡充に貢献していること、空港利用者の動きを70%以上の正確性で予測するシステムも稼働していることなどを紹介した。