国税庁に聞く出国税のあれこれ、しくじり防止には熟知と準備
法文に登場しない旅行会社の役割とは
「不徴収犯」生まないために連携を
-旅行者の理解に向けた取り組みは
齋藤 業界からは「公の機関が発行した説明文書を」と要望されていたので、予算を確保して店鋪で配布するためのリーフレットを250万枚印刷した。本来は税務署などでのみ配布するつもりだったので、当初の想定よりも枚数はかなり多い。ウェブサイトでは英語・中国語・韓国語版も提供しているので、是非とも活用していただきたい。
-旅行会社は負担軽減や混乱回避に向け、どのようにすべきか
齋藤 ご負担が生じることについてはよく理解しているが、しっかりと制度について理解して、対応していただくしかない。例えば源泉徴収に関する税法が変われば、全国の経理担当者の方々が法改正について理解し、対応しなくてはならないのと同じで、個別に出国税だけを支援することはできない。今回については新しい税の導入で、関係者全員が手探りで取り組むしかないので、何かあれば積極的にご相談いただきたい。
そもそも国際観光旅客税法上では、旅行会社は立ち位置や役割が規定されていない。ただし直接お客様から税金を預かる以上、納付を義務付けられている航空会社などが適切に納税できるよう、うまく準備し、連携していただくしかない。クルーズの場合は旅行代金に含むケースや、乗船時に旅行者に渡すクルーズカードから1000円を引くケースなどがあると聞いており、後者の場合は旅行会社は介在しないが、いずれにせよ状況は把握しておく必要がある。大変だとは思うが、改めてご協力をお願いしたい。
-JATAは旅行者への説明のために、パンフレットなどに記載する2つの文案を発表した。航空券の発券が1月7日以降か6日以前かで、徴収の要否が分かれることが旅行会社の対応を難しくしている
齋藤 2つの文案については我々も作成に関与していて、旅行会社には徴収漏れや誤徴収がないようにしていただきたい。なお、事務処理が面倒だからとの理由で納税義務者から徴収せず、旅行会社が自腹を切るのは「不徴収犯」にあたるので、税の意義を理解して注意していただきたい。通常は「預り金」などとするところを、利益剰余金から収めていれば簡単にわかる。
-日頃は国内旅行ばかり販売しているようなスタッフが、たまたま海外旅行を扱ったりすれば、徴収漏れも発生するのではないか
齋藤 徴収すべき税をちょっとした誤りで徴収できず、しかもその旅行者が出国してしまって折衝の機会がなくなったようなケースまで不徴収犯として厳しく追求するかといえば、それは“程度問題”と考えられなくもない。ただ、最初から旅行会社が「こちらで1000円を負担します」とアピールしているようであれば、確実に悪質と見なされる。個々の旅行会社が制度についてどの程度理解しているのかは把握できないが、誤解している人がいるようであれば、改めて周知が必要になる。