東洋大、観光学部開設でシンポ、UNWTOリファイ氏に名誉博士号
東洋大学はこのほど、4月に国際観光学部を開設することを記念し、シンポジウム「観光先進国を牽引する人材育成」を開催した。冒頭で挨拶した東洋大学学長の竹村牧男氏は「国際観光学部の開設により、世界でもトップクラスの観光学に関する教育・研究機関を確立し、国内外の真に意義深い観光振興に寄与していきたい」と意欲を示した。
来賓として登壇した観光庁長官の田村明比古氏は、訪日外国人旅行者が近年急増していることに言及し、「数年前までは日本の観光は国内、海外のみを意味していた。これまでは日本人を相手にビジネスモデルを構築していたが、今後はグローバルな視野が問われる」とコメント。そのため、「(これからは)データを収集・分析し、科学的なマーケティングをおこなえる知識を持った人材が必要」と話し、「ホスピタリティに重きを置く大学が多いなか、(東洋大学は)変革の時代を迎える観光産業に必要な人材を育成する環境が整っている。今後の産業を担う優秀な人材が輩出されると願っている」と期待を示した。
また、同じく来賓として挨拶した日本旅行業協会(JATA)理事長の志村格氏は、観光業界と大学との関係性について「これまでは、連携が密に取れていなかった」と説明。しかし、「政府のビジョンを踏まえても、業界のニーズに合わせた人材育成が必要。業界側も大学に対して、『このようなスペックの人材を、どれぐらい育成してほしい』と要求することが大切」と述べ、大学との連携を強化していきたい方針を示した。
東洋大学は観光学部開設に伴い、中国国家旅游局中国旅游研究院院長の戴斌氏を客員教授に任命したほか、国連世界観光機関(UNWTO)事務局長のタレブ・リファイ氏に名誉博士号を贈呈。講演をおこなった戴氏は「私は、皆様と一緒に学術と教育を通じて、日本と中国の交流のさらなる発展に力を尽くしていきたい」と述べ、リファイ氏は「日本は観光資源だけでなく、人が魅力を作っている。以前、飛行機が離陸する際に整備士が手を振ってお見送りする姿を見たが、これは他の国ではあまり見たことがない」と話し、「観光は違う文化を体験でき、よりお互いを尊敬し合うことができる」との意見を述べた。
シンポジウムではこのほか、パネルディスカッションも開催した。第1セッションとして、東洋大学国際観光学部の島川崇氏による進行のもと、ジェイティービー(JTB)人事部長の花坂隆之氏、旅工房取締役の河合洋氏、日本航空(JL)人財本部人事部マネージャーの高橋秀次氏が「産学連携による新たなる観光教育と人材採用の実践」をテーマに議論。第2セッションでは、「観光行政・観光地域づくりに求められる人材」をテーマに、東洋大学国際観光学部の矢ヶ崎紀子氏がモデレーターとなり、国土交通省道路局総務課道路政策企画室長の清瀬一浩氏、高山市東京事務所長の清水雅彦氏、日本政府観光局(JNTO)海外プロモーション部特命事項担当部長の平田真幸氏がディスカッションした。
なお、東洋大学は1963年に日本初という短期大学の観光学科を設立。現在は、「国際地域学部 国際観光学科」としているが、4月に国際観光学部を開設することで「国際観光学部 国際観光学科」に変更する。観光学科内には、旅行会社への就職をめざす「ツーリズムコース」、ホテル支配人などをめざす「エグゼクティブマネジメントコース」、接客などのサービス業について学ぶ「サービスコミュニケーションコース」、午前中に提携企業で働きながら勉強する「観光プロフェッショナルコース」、観光庁や地方自治体などへの就職をめざす「観光政策コース」を用意。生徒数は、これまでの1学年約240名かから366名に増加する。