年頭所感(1)17年は観光先進国化、さらなる海旅復活の1年に

▽ジェイティービー(JTB)代表取締役社長 高橋広行氏
(※高橋氏の高はハシゴ高)

 2017年は国内・海外ともに大きなイベントはないものの、全体的には昨年と同様の状況が続くと見られる。海外旅行は円安傾向だが、為替の安定による企業景況感の改善などによる堅調な旅行意欲に支えられ、アジアなどの近距離方面が拡大するだろう。一方で、FIT化・ウェブ化が急速に進むなど市場が大きく変化しつつあり、旅行会社にとっては迅速な対応が求められている。

 また、訪日旅行は今年も確実に増加すると考えられる。同時に、消費動向が「モノ」から「コト」へと変化しつつあることから、観光業界にとって非常に大きなマーケットになることが期待できる。

 これらを踏まえ、JTBでは環境変化に対する対応策を強化する。海外旅行のFIT化・ウェブ化については、仕入れと造成の一体化をめざす改革を実施し、仕入れ・企画・造成・販売を同時に強化する。「地方創生」で後押しされている国内旅行は、九州・東北への復興支援を継続しつつ、全国の地域活性化と市場拡大をはかるほか、グローバル事業において人財を含めた投資の促進や「世界発・世界着。」の事業拡大を進める。

 訪日旅行においては、引き続き、ウェブ販売の強化や魅力的な商品の造成、日本到着後のタッチポイントの増設などでさらに需要を獲得する。そのほか、東京オリンピック・パラリンピックの成功に向け、スポーツツーリズムとユニバーサルツーリズムの取り組みを一層強化する。


▽楽天 ライフ&レジャーカンパニートラベル事業事業長 高野芳行氏
(※高野氏の高はハシゴ高)

 昨年は最適な宿泊施設に出会える「マッチング・プラットフォーム」をめざして改革を実施した。社内カンパニー制の導入により、カンパニー内に開発部門を配置することで、ユーザー視点に基づいた高品質なサービスの開発・提供が実現した。今後はマーケティング、営業、プロダクト開発の三位一体で、さらなるサービスの向上をはかる。

 4月には日本語コールセンターの営業時間を24時間365日化し、外国人用窓口も新設した。また、「カスタマーリレーション室」を設置して顧客対応を強化するなど「安全・安心な旅行」の環境作りに取り組んだ。

 昨年は「オンライン旅行予約の拡大」に引き続き貢献できた。経済環境が変化する状況には、フレキシブルに商品の内容や価格を調整できるオンライン旅行予約が適している。市場の変動が大きかった沖縄は大きく数値を伸ばした。訪日市場については、昨年は全体的に落ち着いたが、我々の訪日客の予約は大きく伸びた。今年も「インバウンド」が1つのキーワードになるだろう。

 今年は「アジアのリーディングOTA」を目標に掲げ、第一歩を踏み出す考えで、私自身も1月1日をもって事業長に就任したのを機に、意気込みを新たにしている。宿泊施設の皆様が楽天会員のデータやロイヤリティ、ツールを活用し、的確な販売・プロモーション活動をおこなえる「エンパワーメント・プラットフォーム」へと、さらなる進化を遂げていきたい。


▽KNT-CTホールディングス代表取締役社長 戸川和良氏

  昨年は新しい中期経営計画をスタートさせ、成長領域と位置づける「訪日旅行事業」「地域誘客交流事業」「スポーツ事業」への積極的な先行投資と事業シフトに努めた。訪日旅行事業では、FIT向けウェブサイトを刷新してアジアでの販売拡大に努めた。近畿日本ツーリストではグローバルマーケティング事業部を立ち上げ、「DMC Japan 京都」を開業。今月からはAIを活用した多言語チャットサービスを開始する。

 地域誘客交流事業では、グループ連携によるさまざまな共同イベントの実施に加え、地域が抱える産業・農政・環境などの課題に「観光」の視点から積極的に参画し、ビジネスチャンスの拡大に努めた。スポーツ事業では、海外現地法人と協力して、多数の外国人参加者をさまざまなイベントに招致。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの公式パートナーとなった。昨年のリオデジャネイロでは、観戦ツアーの国内取扱指定旅行会社としてチャーター便を運航しており、その経験は今後の大きな糧になるものと期待している。

 昨年は民泊サービスがFIT化をさらに拡大した。また、経済産業省によれば15年のオンライン旅行取引は前年比9.7%増の2.9兆円まで拡大しており、FIT化とウェブ化への流れは、我々が予測していた速度を超えて一段と進んだように思う。リアルエージェントとしてこの流れにどう向き合い、対応していくかが大きな課題だ。

 4年前、私は年賀式で「立ち止まっていては大きな波に呑み込まれ、さらに厳しい状況に立ち至ることは必然。旅行業における新しい事業モデルの構築が生き残るための唯一の手段」と挨拶した。今年はこの危機感を皆と共有し、生き残りを賭けて事業運営に臨みたい。