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海外旅行の未来、大手3社長が議論-ツーリズムEXPOシンポジウム

迫られるFIT化・ウェブ化
安心安全も強みに

▽「企画、コンサル、斡旋」で勝負

JTB代表取締役社長の高橋氏

 旅行会社の存在意義として必要なものについて、高橋氏は「企画力」「コンサルティング力」「斡旋力」と列挙。つまるところは、旅行のプロフェッショナルとして、単純に素材を右から左へ流すだけの役割からの脱却を意味する。こうした議論はかねてから重ねられてきたところだが、実際に各社はどのような取り組みをしてきているのだろうか。

 JTBでは、例えば仕入れを強化。アロットをリスクなく手に入れるような「スタティックな仕入れ」から、変動相場制や買い取りなどリスクを取る「ダイナミックな仕入れ」へと切り替えていっている。

 これに対して平林氏は、ニーズを把握する手段の一つとして、顧客が現地に着いてからどのように旅行しているのかをより詳細に把握し、そうすることによってサプライヤーの直販とは異なる旅行を提案できるようにしたい考えだ。

 また、企画力について松田氏は、「美味しい料理屋のように、同じ素材でも自分で作るより美味しい」姿をめざしたいとし、菊間氏のワールド航空サービスのような専門特化型の旅行会社とも積極的に業務提携したいとコメント。

 社内でも海外旅行のヘビーリピーター向けの、深掘り商品の開発を急いでいるところで、コストがかかるため従来型商品と同じような広告展開はできないものの、ゆくゆくは現在の9対1の割合を7対3程度に引き上げたいという。


▽告知と販売でネット活用、「流通を壊す」覚悟も

HIS代表取締役社長の平林氏

 流通の仕組みについて高橋氏は、ウェブサイトと店頭、渉外営業、コールセンターを組み合わせて最適なサービスの提供をめざしていると説明。そこで販売する商品もそれぞれの特性に合わせて選別すべきとの考えだ。

 一方、阪急交通社はウェブサイトを告知媒体と申込手段の両面で強化していく方針。現時点では約350万人の年間取扱人数のうち約111万人がネット経由の申込で、そのうち約78万人がネット専用商品を購入しているところという。

 また、HIS平林氏は、店舗はコンサルティング力を高めて専門店化するほかなく、それができない店舗は「新たな道を探るか存在意義が薄まっていく」との考え。

 加えて、直販対策として、65ヶ国228拠点のネットワークを有効活用し現地から直接消費者にアプローチする可能性も示唆。例えば、従来は日本の店舗を維持するために必要だった利益も度外視し「自ら流通を壊す可能性も時と場合によってはある」と覚悟を語った。