海外旅行の未来、大手3社長が議論-ツーリズムEXPOシンポジウム

迫られるFIT化・ウェブ化
安心安全も強みに

 ジェイティービー(JTB)、エイチ・アイ・エス(HIS)、阪急交通社。いわずと知れた海外旅行のビッグスリーだが、その舵を取る3人の社長が、9月23日に開催されたツーリズムEXPOジャパン内シンポジウムに登壇した。テーマはずばり「日本における海外旅行の将来」で、モデレーターは中小旅行会社の雄と目されるワールド航空サービスの菊間潤吾氏。このそうそうたる面々が、日本の海外旅行市場の現状と未来につながる道をどう語ったか。シンポジウム後の記者会見の発言を含めて伝える。

パネリスト
JTB代表取締役社長 高橋広行氏
HIS代表取締役社長 平林朗氏
阪急交通社代表取締役社長 松田誠司氏

モデレーター
JATA副会長 ワールド航空サービス代表取締役会長 菊間潤吾氏


▽2000万人へ鍵は地方の出国率、ITが後押しも

JATA副会長・ワールド航空サービス代表取締役会長の菊間氏

 海外旅行市場動向の指標となる出国者数は、2016年には8月までの累計で5.5%増となるなど回復に転じているが、過去最高であった2012年は1849万人であり、実に200万人以上目減りしている。JATAなどでは長らく2000万人の達成を目標に掲げてきているが、果たしてこの目標は達成可能なのか。

 この疑問に対してJTBの高橋氏は「今のままでは難しい」と回答。少子高齢化で人口減少が進む中で「(市場の)裾野をどう広げるか」が課題であり、具体的には13%程度に留まる出国率を、パスポートの取得促進などを通して高めていく取り組みが必要であると指摘した。

 阪急交通社の松田氏もこれに同意した上で、東京都や神奈川県は出国率が25%を超えるのに対して3%台の地域も多いことを強調。また、年齢別の出国率にも注目し、阪急交通社では75歳頃を境として極端に取り扱いが減る状況を紹介。現時点で最も動きのあるのは昭和22年生まれの68歳であるといい、こうした層が10年後にも活発に海外へ出かけられることが重要と語った。

 一方、HISの平林氏は出国率の課題は認めつつ、2000万人は5年から7年の間で到達すると予想。この理由として、IT技術の進歩によって言葉の壁が解消される可能性を挙げ、訪日需要の増加に合わせて拡大する航空座席や船室のキャパシティも追い風になると分析した。


▽市場回復も苦境変わらず

 前段の通りわずかずつながら回復傾向にある海外旅行市場だが、「リアルエージェントは軒並み苦戦している」(高橋氏)ところ。たしかに観光庁の主要旅行会社取扱概況の調査では、海外旅行の総取扱額が6月まで一度も前年を上回っておらず、需要は戻っても旅行会社のビジネスには結びついていない現状が浮かび上がる。

 この原因はいうまでもなくFIT化とウェブ化だ。例えばFIT化は募集型企画旅行の“広く多く”という特性と相反するものであり、こうした市場のニーズとプロダクトとのミスマッチの解消が最大の課題となっている。