現地レポート:カナダ・ケベック州、大河が育む観光資源
魅力的な自然と歴史のハーモニー
ホエールウォッチングから先住民の文化体験まで
高級リゾート地ラ・マルべ
気軽にホエールウォッチング
べ・サン・ポールの後は、セント・ローレンス川沿いを北上し、高級リゾート地のラ・マルベに向かった。今回は自動車を利用したが、同じルートには現地で人気の観光列車「ル・マシフ鉄道」も走っている。列車はケベック・シティ郊外のモンモランシー滝駅からセント・ローレンス川沿いを北東に走り、べ・サン・ポールに途中停車したのち、さらに北上してラ・マルベに向かう。セント・ローレンス川沿いの風景を車窓から楽しめることに加えて、地元食材を生かしたディナーを目当てに乗車する旅行者も多く、特に紅葉シーズンには人気が高いという。
ラ・マルベを拠点とした夏のセント・ローレンス川観光のハイライトはホエールウォッチング。豊かな餌場を求めて、ミンククジラやシロナガスクジラ、ザトウクジラなどのほか、シロイルカとして知られているベルーガも集まる。川でホエールウォッチングとは少し意外だが、ラ・マルベの周辺は汽水域でクジラが十分に生息できるほどの川の深さと広さもある。
現地のランドオペレーターの「クルーザーズAML」は、川沿いの町のタドゥサック、べ・サン・キャサリン、リビエール・ドゥ・ループに発着場を持っており、ゾディアックを含む24隻のボートでホエールウォッチングツアーを催行している。我々もツアーに参加したが、4月下旬のこの日の気温は摂氏10度以下で、ボートに乗って甲板で風を受けると、体感温度は真冬並みになった。ただし、ボートにはキャビンもあるほか、厚手のジャケットも貸してくれるため、寒さを気にせずに気軽にツアーを楽しむことができる。
ツアーガイドからクジラの生態やセント・ローレンス川の地理的特徴の説明を受けながら、甲板でクジラを探す。しかし、相手は自然。こちらの希望通りにはなかなか現れてくれない。それでも呼吸のために浮上し、潮を吹くクジラの姿や白いベルーガの一群を目に捉えることができた。
ちなみにホエールウォッチングの拠点の1つであるタドゥサックは、現存する北米最古のフランス人入植地で、かつては毛皮貿易の本拠地だった。また、セント・ローレンス川に流れ込むサグネ川には北米で唯一のフィヨルドがあり、世界で最も美しい湾の1つと言われているところだ。