豪州70万人へ、座席増など追い風に-各州に聞く現状と戦略
新規就航も積極誘致、業界向け活動の強化も
日本人訪問者を5年で倍増――。新興国ならば不思議ではないが、オーストラリアは30万人強を2020年までに70万人へ拡大しようとしている。途方もない目標のようにも思えるが、カンタス航空(QF)による羽田/シドニーと成田/ブリスベンの就航、日豪経済連携協定(EPA)の発効など追い風も吹く。目標達成に向けた現状と取組みの方針を、6月22日から25日にかけて現地で開催された商談会「AUSTRALIAN TOURISM EXCHANGE(ATE)」で聞いた。
▽オーストラリア政府観光局(TA)
2014年の日本人訪問者数は0.6%ながら前年を上回って32万6500人となり、TA本局局長のジョン・オサリバン氏は苦境を抜け出せたと分析。TA日本局長のアンドリュー・ライリー氏もQFの新路線、そして噂される日系航空会社の就航が実現すれば「第3のブーム」を起こすことは可能と自信を示す。
昨年度は「美食大陸 オーストラリア」キャンペーンを実施し、食事そのものとそれを楽しむ環境の両面をアピールしたが、今年は各地のビーチやグレートオーシャンロードなどの魅力に焦点を当てる。
また、「オージー・スペシャリスト・プログラム(ASP)」を刷新して再開。ASPの利用促進や旅行会社向けセミナーに専従する担当者も雇用し、旅行業界向けの活動を強化する。さらに、今年9月には現地から大規模ミッション団の来日も計画中だ。
▽ビクトリア州
今回のATEが開催されたメルボルンを擁するビクトリア州。昨年にはジェットスター航空(JQ)がメルボルンへ就航した。ビクトリア州政府観光局の高森健司氏によると、当初は旅客数が伸び悩んだ同路線も現在は利用率が安定し、機材の大型化も決まっている。
プロモーションとしては、食や街歩き、イベントといった軸を堅持。食では、TAの「美食大陸」との相乗効果が望めるカフェ文化や食事文化を、街歩きでは特定区間が無料となったトラムを中心に歴史と文化を感じさせる路地裏などを紹介。JQ便の需要喚起のため、旅行会社やメディア向けFAMツアー、消費者向けの交通広告、イベントなども実施している。
このほか、イベントでは錦織圭選手の活躍で注目が増す全豪オープンやF1レース、マラソン、競馬のメルボルンカップなどを取り上げる。また、ヤラバレーやグレートオーシャンロードなどで泊数を増やしてもらうための工夫も続ける。他州と協力し周遊ルートの開発なども取り組みたい考えだ。
▽ニュー・サウス・ウェールズ州
QFが8月に羽田空港からシドニーへ就航するニュー・サウス・ウェールズ州は、すでにセミナーや鉄道広告などで同路線を訴求。他社の就航も期待されており、誘致の働きかけも積極的に続ける。座席の安定と増加のため予算も増やしており、2015年は日本人訪問者数を前年比10%増と拡大する目標を掲げる。
予算を投下する先はFAMツアーや広告展開など。すでに認知が進みさらに規模も拡大中のビビッド・シドニーを筆頭に、マラソンやバトミントン、オペラなどの各種イベント、そしてワイナリーもアピールし集客する。
州政府観光局CEOのサンドラ・チップチェイス氏は、「新しい座席は新しい市場を作る。すでに素晴らしい魅力を持ったプロダクトやサービス、宿泊施設はあり、あとは座席だけだ」とコメント。EPAの締結による業務渡航の増加も追い風に、キャパシティのさらなる拡大をめざす。
▽西オーストラリア州
西オーストラリア州政府観光局の吉澤英樹氏によると、2014年の日本人訪問者数は前年から3割増と増加しており、2012年からの平均でも1年辺り4%ずつ増加。いずれもオーストラリア全体を上回っていることから「悪くはない」との認識だ。
直行便がない中での堅調な伸びは、外航各社との連携によるもの。しかし、各社とも自国のピークシーズンに席が利用できなくなることもあり、QFがパース線を運休した2011年以前の訪問者数の回復は直行便なしでは不可能との考え。そのため、まずはチャーターないし季節運航の可能性を探る。
プロモーションでは、ワイルドフラワーにウォーキングやトレッキング、ワイナリー巡りなどを組み合わせた提案を強化。具体的には、マーガレットリバーやウェーブロック付近での宿泊を促進する。直近では、シャークベイが市場で浸透してきているほか、ロットネスト島に宿泊するツアーなども造成され、定着の可能性が見えているという。