JATA、双方向4000万人に向け新たな提言-「交流大国」めざす

  • 2015年6月24日

会長の田川博己氏  日本旅行業協会(JATA)は6月24日、第59回の定時総会を開催し、今年4月に観光庁に提出した新たな海外・国内・訪日旅行の3つの政策提言の内容を明らかにした。政府が5日に策定した「観光立国実現に向けたアクション・プログラム2015」に盛り込まれた内容も含めて、今後は外務省や総務省などの関係省庁とも連携し、各項目で掲げた目標の実現化をめざす。JATA会長の田川博己氏は「短期的な決戦も大事だが、長期的な大きな視点で話をしていくこと」を重要視する考えを提示した上で、「観光立国から観光大国、そして“交流大国”へと行き着く」これらの計画の実現に対し意欲を示した。

副会長の菊間潤吾氏  海外旅行の政策提言「4000万人相互交流時代における海外旅行2000万人達成に向けて ツーウェイツーリズムによる交流立国の実現」では、新たなキーワードとして、ツーウェイツーリズムまたは3国間のグローバルツーリズムによる「交流大国」をめざすことを明示。数値目標として、2020年に海外旅行2000万人と訪日旅行2000万人を合わせた相互交流4000万人を、25年には各2500万人を合わせた5000万人の相互交流を、それぞれ掲げた。

 具体的な行動計画としては「休暇制度の普及」を筆頭に掲げ、年次有給取得率向上と計画的長期休暇取得の普及に向け、障がい者雇用と同様に企業規模に応じた規定を設けることを提案。そのほかには、満18歳までの若年層に対する旅券無料化などによる「若者の国際化支援」や、地方空港の国際化推進などによる「国際化による地方創生」など、計10項目を示した。

 海外担当の副会長であるワールド航空サービス代表取締役会長の菊間潤吾氏は、これらの計画に関する諸問題については「早期解決は難しいかもしれない」と説明。一方で、現在は14%台にとどまっている出国率を16%にまで引き上げることで、海外旅行2000万人の達成は可能である旨を示し「難しいことではない」と強調した。

副会長の吉川勝久氏  国内旅行の政策提言「地域経済活性化に向けて」では、観光客のリピーター化促進を地域の活性化につなげる方向性を提示。地域における長期的な観光基本計画の策定推進や、送客側のニーズに応える「観光総合プラットフォーム」の実現、プロモーション計画の複数年化による継続的な予算措置など、計12項目の提言を示した。なお、国内担当の副会長であるKNT-CTホールディングス取締役会長の吉川勝久氏によれば、観光庁への提出時には、観光振興関連予算を省庁横断で一元化することなども要望したという。

副会長の丸尾和明氏 訪日旅行の政策提言「訪日外国人旅行者2000万人達成に向けた提言書」でも、リピーター化の促進を重要視。今後のインバウンド戦略を支える「質の向上」と「地域分散」を、リピーターの存在が「強く結びつける」との見方を示し、喫緊の課題として宿泊需要の地域分散および旅館の活用など4項目を挙げた。加えて2000万人達成に向けた課題として「リピーターの拡大」や、新たな品質認証制度を活用した「訪日旅行者の体験の質の向上」、さらに「訪日旅行者の安心・安全の確保」など、7項目を掲げた。

  訪日担当の副会長である日本旅行代表取締役社長の丸尾和明氏は、リピーターの育成に向けては、アジアからの旅行者だけでなく、欧米からの旅行者にも注力する必要があると指摘。旅行者が訪日するための目的の多様化に向け、戦略を練り上げるべきとした。

 そのほかにこの日は、2014年度の事業報告を承認するとともに、3月の理事会で議決した15年度の事業計画について報告。標準旅行業約款改正の取り組みについて言及した事務局長の越智良典氏は、昨年7月に受注型企画旅行の取消料規定に関して、個別約款による対応が可能になったことを報告した上で「現在は募集型企画旅行に関しても、PEX運賃やLCCを利用した際の取消料、ホテルのアップグレードに伴う変更補償金について、個別約款で対応できるように折衝中」と説明した。詳細は近日中に発表するという。


※訂正案内(編集部 2015年6月25日 9時30分)
吉川氏の役職に誤りがありました。お詫びするとともに修正いたします。