インバウンドも「若い世代」にフォーカスを、ASEANの成長を取り込むために
東京オリンピックのチャンス最大化は「若い世代の力」がカギ
~ツーリズムEXPOジャパン国際観光フォーラム
オンラインを巧みに使うアジアの若い世代
基調講演の後はパネリストによる各市場動向の発表と、BBCトラベルジャーナリストのロバーツ氏の進行によるパネルディスカッションがおこなわれた。
タイについては、ニスコトラベルのパントン氏によると、訪日旅行者の43%が観光、32%が商用で、日本へ行く利点としては、LCCを含め航空路線が充実しているうえにビザが不要など訪日しやすい要素が多いこと。特にビザの緩和により、金曜日発・日曜日夜着の短期間での旅行が可能になり、まさに“ドリーム・デスティネーション”になった。難点としては、英語が通じないなどの言語の問題のほか、ピーク期の宿泊施設の予約が難しいこと。ただし、タイ人は前倒しでの計画はしないという。
マレーシアでは、アジアエクスペリエンスツアーズ&PSTトラベルサービスのフーン氏によると、経済成長著しい同国においては共稼ぎの家庭が多く、その子供は自分の所得をすべて自分のために消費する傾向が強い。また、急速にFIT化が進んでおり、「マレーシアを対象とするなら、特に若い世代にフィーチャーし、そのニーズを理解すべき」とアドバイス。訪日旅行の目的は日本食とショッピングで、「豊かなムスリムが旅行をしはじめた」という。
シンガポールでは、ダイナスティトラベル・インターナショナルのシー氏によると、人口500万人に対しのべ800万人が海外旅行をする成熟市場であり、訪日旅行では東京や大阪、北海道などから九州や名古屋、クルーズ、鉄道旅行など、方面や旅行形態が多様化している。シー氏は今後、日本がインバウンドの増加をめざすためには「“Y世代”など30代以下の新しい世代に目を向けるべき」と指摘。インターネットを使いこなしてオンラインで情報を入手し、新しい文化に興味のあるY世代を主眼に置いた魅力づくり、ブランディングを行なうよう進言した。
若い世代の傾向はマレーシア、タイも同様で、旅行をする際には旅行会社に電話で問いあわせたり来店したりする人は少なく、まず自分でインターネットで検索。割引をチェックし、他人のレビューを見ながら旅行を決める。「自分たちで旅行をしたい。単なる観光だけでは満足せず、行ったことのないところへ行ったり、アドベンチャー的な体験をしたい」(フーン氏)、「英語が上手で日本食が大好き。FITでも問題なく、日本にとって大きなマーケット」(パントン氏)だという。
さらにシンガポールでは学校で「教育ツアー」を推奨しており、この過程で若い世代は日本の伝統文化を知っているという。そのためシー氏は日本に対して現状以上の情報発信を求め、「例えばFIT向けにホームステイを勧めるのは良いと思う」と提案。シー氏は以前、沖縄でのホームステイ中にウミガメの産卵を見た経験が印象的だったとし、「若い世代はこういう一生に一度の体験が好き」だと強調した。