東京オリンピックの真の効果、豪・英の事例から日本独自のめざすべき姿を探る

  • 2014年10月9日

ツーリズムEXPOジャパン2014国際観光フォーラムより
東京オリンピックをバネにインバウンド3000万人達成に向けて

成熟した都市でのレガシー創造が東京の課題

JNTO理事長 松山良一氏

 オサリバン氏、ロドリゲス氏の発表を受け、JNTO理事長の松山氏は、「2020年は東日本大震災から生まれ変わった姿を広める機会としたい」とメッセージを提示。これを実現するために克服すべき課題として、「地方への効果波及」、「開催年の訪日客減少の最小化」、「メディアの日本のポジティブなイメージ発信」をあげた。

 また、「東京オリンピックは、成熟した都市でのレガシーをいかに創造するかも問われている」と述べ、5つの案を発表。「バリアフリー対策、環境に優しいエコ五輪の実現」、「観光地・MICE開催地としての魅力発信による日本のブランド確立」、「国内における観光業の重要性の認知浸透」、「オリンピック効果の地方波及」、「ボランティア精神の継続」をレガシーとすることで、「2020年2000万人は達成できる。3000万人への足固めにしたい」と述べ、同時に観光の質の向上を図っていく考えを示した。


2000万人達成時の業界は変わっていなくてはならない

首都大学東京教授、観光庁参与 本保芳明氏

 3人の発表を受けて、モデレーターを務めた首都大学東京教授で観光庁参与の本保氏は、「観光のレガシーに対する統一した考えを持つ必要があるか」、「それはトラベルデスティネーションとしてのイメージを作ることではないのか」と、2つの問題提起をした。

 これについてオサリバン氏は「レガシーについては一つではなく、複数の考えを持って臨んだ。ただし目標は明確で、シンプルな戦略で効率的に実施した」と説明。リファイ氏も「国や町、国民が以前よりも改善された環境にあること。この定義で考えれば複数のレガシーの考え方でよい」との認識を示した。

 また、ロドリゲス氏は、「6年間で2000万人に倍増するなら、全く違う業界にならなくてはならない」と指摘。「2000万人に増やすなら、日本が他国の目にどう映るかを意識して動いてほしい。例えば、外国人雇用も必要ではないか」と提言した。

 最後に本保氏は、「日本がするべきことは、日本らしいものを考えて残していくこと。日本人の目も大切だが、他国の目に映る姿を意識し、イメージを伝えることが重要」と述べた。その上で「東京オリンピックを『日本オリンピック』に作り上げることが課題であり、実現できれば東京オリンピックは成功である」とまとめた。



世界に通用する観光地域づくりが大切

観光庁長官の久保成人氏

 パネルディスカッションを前に登壇した観光庁長官の久保成人氏は、2013年の訪日外客数1000万人達成について「大きな節目だが、日本の観光資源から考えると満足できる数字ではない」と強調。その上で「2020年2000万人の目標に、オリンピックは大きな追い風になる。しっかり頑張って期待に応えていきたい」と、力強く語った。

 また「(オリンピック)後も高い水準を維持しなくては、取組みが一過性のもので終わってしまう」と問題意識も提示。「日本各地が力強く発展していくためのレガシーを生み出していく必要がある。世界に通用する観光地域を作っていく」と意欲を示した。