東京オリンピックの真の効果、豪・英の事例から日本独自のめざすべき姿を探る
ツーリズムEXPOジャパン2014国際観光フォーラムより
東京オリンピックをバネにインバウンド3000万人達成に向けて
シドニーオリンピックの効果
投資以上のリターン、開催後の観光振興が続く
パネルディスカッションはまず、オーストラリア政府観光局本局局長のオサリバン氏が、シドニーオリンピック運営委員会のメンバーを務めた経験を踏まえ、準備段階から開催後までの観光振興を説明。
オーストラリアではオリンピックに際し、国としての価値を提言することを重視した。「オーストラリアを多くの人に好まれる国にする。国の価値を深め、広げていく土台作り」を指針に、シドニー開催が決定した1993年には海外からの観光客数の年率10%増を目標に設定。5000万米ドルを投じて準備をおこなったという。
具体的には世界的な大企業をはじめ地元企業とのパートナーシップや、メディア発信、インフラ整備など。シドニー以外の都市で魅力的なイベントが開催できることや、地理や景観、人々のホスピタリティなど国の多面性のアピールなども実施した結果、企業によるカンファレンス関係で1億7400万豪ドルの収入を計上。メディア戦略では32億豪ドルの価値を得た。観光客数は目標の年率10%増を上回る15%増を達成し、300億豪ドルの消費を生み出しているという。
オリンピック開催の実績を受けて、2003年のラグビーワールドカップや2006年のコモンウェルスゲームなどの大イベントの誘致に成功。2015年にはAFCアジアカップやクリケットワールドカップ、ネットボールワールドカップを予定しており、3つのイベントで15万人の訪問を見込んでいる。オサリバン氏は「オリンピック後にいかに観光振興ができるよう、テコ入れをしていくことが大切」とアドバイスする。
ロンドンオリンピックの効果
国のイメージアップを実現、観光客数2ケタ増に
英国政府観光庁会長のクリストファー・ロドリゲス氏によると、イギリスでは2012年のオリンピック開催決定で注力したことは、「ロンドンではなく“英国”を宣伝すること」。そのため、統一したメッセージを首相から発信し、14都市で広告キャンペーンを実施した。
また、メディア戦略では「自分たちが伝えたいことを語ってもらう」ことを重視。英国のストーリーを発信して、イメージ浸透をはかった。これにより、2万8000件の露出を得て、広告換算で37億ポンドの価値創出に成功。英国のイメージも上がり、2013年の観光客数は17%増の3300万人に増加。2014年第1四半期も12%増で推移しているという。
ロドリゲス氏は「オリンピックでの観光におけるレガシーは、投資額より毎年のリターンが得られること」と断言。そのため、ロンドンオリンピックの投資額は、開催前が全体の2割、開催期間中が2割、開催後に6割を充てたといい、実施したキャンペーンやインフラ整備等の効果を活用するためにも、開催後の対応が重要であることを強調した。
このほか、オリンピック期間中の観光客・ビジネス客の減少を最小限にするために、ホテル等の価格上昇を抑える必要性も指摘した。
ただし、ロドリゲス氏は「日本は、他の事例を同じように当てはめるべきではない。日本としていいものにすること」と提言。「日本にはユニークな文化がある。日本の人々を重要な“売り物”として活用してほしい」とアドバイスした。