旅行産業研究会が報告書、約款は消費者庁と検討継続、単品販売は方向性示せず
着地型旅行普及で第3種の業務範囲拡大
宿泊施設などの商品販売の可能性も
着地型旅行の普及に向けた商品造成の促進・販売経路の拡大では、旅行者のニーズの多様化への対応や地域資源の活用による地域の活性化のため、旅行商品の品質や安全確保に留意しつつ、第3種旅行業者の業務範囲の拡大をおこなうことで、商品造成の促進と着地型旅行商品の多様化につなげていく必要があるとした。
現行では第3種旅行業者は、営業所のある市町村や隣接する市町村など、実施区域を限定した国内の募集型企画旅行の企画・実施が可能。石原氏によるとこの区域を拡大するべきとの意見も出ており、今後検討していく。
また、着地型旅行の普及のためには商品の販売経路の拡大も必要とのことから、商品販売に関する緩和を求める意見も出された。具体的には、宿泊施設などで一定の条件を満たす着地型旅行の販売を可能とし、旅行者の利便性向上と着地型商品の販路拡大をはかるという。
観光庁では昨年、着地型旅行の普及促進のために、ハードルを引き下げた「地域限定旅行業」を新設するなど取り組みをおこなってきたところ。石原氏は「(地域限定旅行業などで)少しずつは増えているが、一気に着地型を増やすのであれば宿泊施設などでの販売を正面から認めてしまう」考えもあると述べた。ただし、実施するためには消費者保護に留意する必要があるとし、販売条件について、宿泊客に対する販売のみを許可するのか、対象を道の駅や観光案内所などについても認めるのか、商品の規模や種類、期間などを検討していくとした。
旅行業に係る安全マネジメント、JATA中心に展開
旅行業に係る安全マネジメントについては、2013年12月にJATAが取りまとめた「観光危機管理体制における組織的マネジメントのあり方」を踏まえ、JATAが中心に加盟会社以外を含む旅行会社全体への普及を促進していくという方向性を示した。
さらに研究会では旅行の安全、安心に関する対応は、旅行業者の提供する付加価値として捉え、海外のOTAなどに対する優位性として消費者に積極的に示していく必要があるとした。
また、旅行会社が消費者の旅行商品の選択の参考になるよう、旅行商品ごとにどのようなリスクがあるのかを示す必要性があると指摘。訪問する地域や実施するアクティビティに関する情報について情報を発信していくべきとの意見が示された。石原氏は一定の危険性を内包する旅行商品に限定するなど「現実的に運用可能な範囲での情報を発信していく」とするとともに、旅行者自身にも「自らの身は自らの責任で守るということをしっかりと認識してもらうべきでは」と語った。
訪日オペレーターの規制を示唆、新サービスへの対策も
現行旅行制度の範囲外の論点では、インバウンドを取り扱うランドオペレーターへの対応として、法規制の是非を検討すべきとの声があがった。ただし、現在JATAが訪日オペレーターに対し「ツアーオペレーター品質認証制度」を展開していることから、まずは同制度がどういった成果を上げるのかを注視していく方針だ。
また、空き部屋を短期間貸したい人と旅行者をつなぐサービス「Airbnb」のような民泊提供サービスなど新サービスが現れる中、旅行業者の提供するサービスになりうるかや、旅行業法制度を見直す際も新サービスに留意して検討していくべきとの意見があがった。