主催ツアーの安全安心、綿密な情報収集を-業界団体活用も
▽乗り物は確実な安全管理を 旅の楽しみも重要
海外旅行中の乗り物に関する安全管理も旅行会社にとっては重要な課題だ。とくにバスに関しては2006年にトルコ、2008年に米国のユタ、2010年にエジプトで重大事故が発生しており、旅行会社の対応が問われている。
川畑氏は「JATAの『海外バス会社の選定及び運行に関する基本ガイドライン』に則って契約を交わし、バス会社の保険加入状況チェックと、現地オペレーターを通じた年1回の安全諸項目の確認をおこなっている」とユーラシア旅行社の取り組みを説明。安全項目については、シートベルト設備の有無やドライバーの走行距離・走行時間に関する管理規定の徹底などで、これらの規定を社内とオペレーター、バス会社で共有し、常にチェックを怠らないよう工夫をこらしている。さらに、各国語に翻訳した安全運転に関するステッカーを、ドライバーの運転席から見える場所に貼ったり、添乗員からドライバーに注意項目を口頭で伝えてもらっているという。
バス以外の乗り物に関しては、たとえば気球観光については「気球、ヘリ遊覧は原則として基本日程に入れず、あくまでオプショナルとして対応している」(川畑氏)。一方、グローバルユースビューローは「気球観光はかつておこなっていたが、現在は中止した。しかしギアナ高地などのヘリ遊覧や、マダガスカルなどのセスナ遊覧については実施している」と説明。「危険回避は大切だが、やりすぎれば旅の楽しみを損ないかねない。もちろん参加者の理解や注意喚起を十分に行うことが前提とはなる」(グローバルユースビューローの柴崎氏)との考えを示した。
▽参加者の健康状態の把握 保険加入の呼びかけも
シンポジウムでは未然にトラブルを回避するための対策についても議題にあがり、旅行者に占めるシニア層の割合の高まりをうけ、健康状態の把握の重要性がクローズアップされた。
柴崎氏によると、グローバルユースビューローでは参加者に対し「おうかがい書」の事前提出を求めている。これは既往症やアレルギーなどの情報を通じて参加者の健康状態を知るのを目的としたもので、「血圧関係の薬やインシュリンなど常時服用している薬は手荷物に入れるように指導し、万が一のロストバゲージなどにも備えている」(柴崎氏)という。
一方、ユーラシア旅行社は申込書自体に、ペースメーカーやインシュリン注射の情報を書き込むスペースを設定。川畑氏は「航空会社によって、機内持ち込みに事前申請が必要なケースもあるので、あらかじめ情報を入手する努力をしている」と説明した。
ツアー参加者には海外旅行保険への加入を促す努力も実施している。とくに秘境ツアーや登山ツアーについては重視しており、ユーラシア旅行社では「高山病も予想される中級以上の登山ツアーの場合は、救援者費用付帯保険に加入することをツアー参加の必須条件としている」(川畑氏)。グローバルユースビューローも「なぜ保険加入を勧めるかを十分に説明し、必ず保険に加入してもらうようにしている。また旅行会社のコントロールが及ばないロストバゲージや航空機の遅延など、旅行者自らが対処費用を負担しなければならない事態を想定して、変更特約の付いた保険を勧めるようにしている」(柴崎氏)と説明。旅行者側にも協力を求める必要があると説いた。