多様化するシニア-現在~次の世代のマーケティング、JTBFシンポジウム
これからは支え合いの時代
でも自分らしさも求める傾向に
少子高齢化が進む日本は、今や65歳以上が4人に1人。2030年には団塊ジュニアが最も多い世代となり、市場のほとんどがシニアになる時代がやってくる。「誰もが1人で生きられず、お互いに欠けているものを埋め合う社会になる。人と人とのつながり、支え合いが大切になる」と、三浦氏は展望する。
日本の消費トレンドも、その考え方に向かっているという。三浦氏は著書「第四の消費」で、大正時代以降の消費社会の特徴を、社会背景や人口、国民の価値観などから4つの時代区分で表現。国民の価値観や豊かさの尺度が、戦前まで(第一の消費社会)の「国家」から戦後(第二の消費社会)の「家族」、オイルショックからバブル崩壊まで(第三の消費社会)の「個人」に移り、2005年以降の “第四の消費社会”では「つながり」になるとの考えを示す。
三浦氏は、第四の消費社会を特徴づけるものとして、「シェア」「つながり」「パブリック」「シンプル・エコ・ナチュラル」「手仕事」「日本(脱・欧米)」「多様な地域社会(脱・グローバリズム)」と7つのキーワードを提示。特に重要なポイントとして「“私有”が幸福だった時代ではなくなり、シェアに価値が生まれはじめている。その担い手が、シニア予備軍の団塊ジュニア」だと指摘する。
それを象徴するのが、「シェアハウス」だ。「個性的」「エコでエコロジー」「コミュニティ」「セキュリティ」というシェアハウスの持つ4つの価値に、主に30代独身女性が反応した。三浦氏は「シェアハウスの利点を考えることが、今後の第四の消費社会を考えるヒント」とし、「これはシニアの旅行にも当てはまる。離婚や死別で独身が増えると、この4つの価値を社会が求めるようになり、これを提供することが企業の役割になる」と続ける。
ちなみに、三浦氏は旅行商品ではピースボートがシェアハウスに似ているという。実際にピースボートの経験者はシェアハウスに住む人が多く、「自分らしさという第三の消費社会の価値を維持しつつ、みんなで感動を分かち合える」ことが共通点だと説明する。黒須氏も、JTBの「ガクタビ」を、同様のコンセプトで成功している旅行プロダクトとして提示。都市間の移動はバスの同乗者と楽しみながら、現地観光は各自で行なうスタイルが「自分らしい旅行だけどシェアできる旅行にもなっている」という。