TUI会長、デジタル活用で顧客との関係強化を-JATA基調講演より
デジタルを活用し、新しいチャンスを掴む
顧客との接点を捉え、販売に活用
顧客のニーズを掴むために、フレンゼル氏はデジタルを活用し、顧客とのコミュニケーションを強化するべきと説いた。デジタル化は「旅行業界が抱える大きな課題でもあるが、チャンスでもある」とし、「まったく新しいアプローチで商品を提供できる機会が得られる」点を強調。モバイルが発達するなか、インターネットで時間や場所を選ばず、リアルタイムに顧客とコミュニケーションがとれる環境が今後、さらに広がっていくとの見通しだ。
インターネットが発達する前は、消費者はオフラインで旅行会社にて予約をし、旅行会社が航空券や宿泊施設などを手配した。旅行情報も旅行会社がほぼ独占していた。しかし、インターネットの普及で消費者がサプライヤーに直接旅行の予約をし、情報を収集するようになり、SNSを活用して消費者同士が相互に交流し、旅の感想などをすぐにフィードバックするようになった。
旅行者がインターネットを使う場面は、旅行計画時の情報収集、予約時、現地到着後のエクスカーションの予約やタクシー、レストランの予約など様々だ。フレンゼル氏は「あらゆる場所にタッチポイントがある」と述べ、機会を逃さずに旅行者とコミュニケーションをとることで、商品やサービスを販売するチャンスが高まるとした。
また、旅行会社の店頭でも、デジタルの活用は可能だ。例えばTUIの旗艦店では、店内に大きなタッチスクリーンを設置。訪問者は旅先の映像や、旅行者の口コミを見ることができる。スタッフはモバイルデバイスを持ち歩き、いつでも訪問者の問い合わせに対応できる体制をとっているという。
フレンゼル氏は「行き先からでなく予約経験から旅行は始まる」とし、TUIの旗艦店でさまざまなツールを使って情報を提供し、顧客により近いところで旅を提案することで、「予約」を「記憶に残る経験」にしたい考え。「売り手がお客様の個別体験の管理者になるよう、旅行商品を提供している」という。同氏は「観光業50年携わってきたが、長い間で学んだことは、お客様に目を向けてニーズをしっかりフォローすれば勝者になれるということ」と述べ、顧客との関係性の強化が必要であると改めて訴えた。