オーストラリア、50万人市場に向け取り組み強化-ATE会場から
6月15日から21日にかけて、西オーストラリアのパースで「オーストラリア・ツーリズム・エクスチェンジ(ATE)2012」が開催された。オーストラリアへの日本人訪問者数は、12年1月から4月までの累計で前年比7.5%増の約12万人とプラス成長しているものの、日本の海外旅行市場全体と比較すると回復が遅れている。しかし、昨年の震災直後に開催されたATE2011で示された見通しに比べればはるかに高い水準で、オーストラリア政府観光局(TA)本局局長のアンドリュー・マカボイ氏は回復傾向に自信を示す。好調な伸びを示した10年レベルへの復調とさらなる成長にむけて、TAや各州・地域の観光局がどのように活動する方針か、ATE2012会場での取材からまとめる。
▽市場の現況、TAの活動方針
オーストラリアへの日本人訪問者数は、11年5月から12年4月までの1年間で9.1%減の37万5100人と落ち込んだ。しかし、マカボイ氏は「震災後に需要が減退することは当然」と指摘し、その上で「訪問者数は依然として上位5市場に入り、さらに1泊あたりの消費額は最上位の極めてイールドの高い市場」と重要性を強調。需要も「現在は回復傾向に転じている」とし、特に教育旅行市場が活発であることから「このまま行けば通年で2桁増を達成できるだろう」と分析した。
マカボイ氏は日本市場は将来的に年間45万人から50万人の規模に落ち着くと予測。この見通しに沿った活動としてTAでは、通常予算は横ばいであるものの、政府のアジア向け追加予算のうち相当程度を日本市場に投じる計画だ。追加予算は12/13年度が850万豪ドルで、消費者向けの活動を予定。なお、予算は次年度以降1400万豪ドル、1700万豪ドル、2100万豪ドルと増額していく。
プロモーション方針としては、「精神年齢35歳」「知的好奇心が旺盛」「世帯収入が約600万円以上」「旅慣れている」といった属性を持つ女性層をターゲットにしたマーケティング活動を継続しつつ、教育旅行にも注力。ゴルフやウォーキング&ハイキング、フード&ワインなどのテーマ別に情報を集約して提案しているほか、タブレットPC向けのアプリも開発しており、日本語版も近々に提供予定だ。
なお、旅行業界向けの活動としては、長年継続してきた日本市場向けの旅行商談会「JAM」を開催しないことを決定しているが、「旅行会社の社員に、現実のオーストラリアの体験を提供したい」ため。 また、TA日本局長の堀和典氏によると、州や地域などによって異なる現地側のニーズに対応する必要もあり、今後はJAMがなくなる一方で、より多くのミッション団が来日することで従来以上の情報が日本市場に提供されるようになり、ATEのようなイベント、FAMツアーなどの機会では、より多くの旅行会社スタッフを現地に招くことが可能になるという。