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オーストラリア、50万人市場に向け取り組み強化-ATE会場から

▽ニューサウスウェールズ州、ノーザンテリトリー、ビクトリア州、
タスマニア州、南オーストラリア州

「VIVID SYDNEY」の様子

 ニューサウスウェールズ州では、11年4月から12年3月までに日本人訪問者が6%減と健闘。平均滞在日数も全体の5%増に対して7%増となっている。同州では昨年7月に、ツーリズム・ニューサウスウェールズ(州政府観光局)とイベント・ニューサウスウェールズなどを統合して「デスティネーション・ニューサウスウェールズ」を設立したところで、イベントをフックにした誘客にも注力している。

 例えば、来年は6月に開催予定の「VIVID SYDNEY」は、街中をキャンバスに見立てる光のイベントでオペラハウスにも映像を投影。ショルダーシーズンでホテル、航空券ともに割安に入手可能であることから、日本市場でもアピールしたい考え。このほか、シドニー湾に舞台を浮かべるオペラなど、ユニークなイベントも開催されるという。

ノーザンテリトリー政府観光局PRコーディネーターのハンナ・ブロディ-ホール氏(中央)

 ノーザンテリトリーは日本人訪問者が20%減の2万3000人と大きく減少したものの、回復傾向に転じたところ。JQが成田からマニラ経由でダーウィンに就航し、関空からもシンガポール経由で就航を予定していることから、人気の高いウルル(エアーズロック)に加え、今後はカカドゥやリッチフィールドなど国立公園の需要喚起をはかる。ダーウィンに関する日本語の情報自体が不足しているとの考えで、JQのメールマガジンなどを活用して認知度を向上していく。また、関係各所と共同で、日本人ガイドの増員など受け入れ体制の整備を進めるという。

ビクトリア州政府観光局ビジネス・デベロップメント・マネージャー日本・韓国担当の高森健司氏(左)

 ビクトリア州は、日本人訪問者が8.6%増と唯一プラス成長。州政府観光局の高森健司氏によると、教育旅行が強く、リピーターが多いため震災の影響が少ないことに加え、ビジネス需要が増加し、レジャー需要も維持できた結果という。今後も引き続きメルボルンマラソンやメルボルンカップ、全豪オープンなどイベントを打ち出していく方針で、教育旅行でも州教育省と共同でプログラムを開発している。また、タスマニア州も年間5000人から6000人の規模で変化なく、観光局側も従来からターゲットとする「アッパークラス」「ラグジュアリー」「55歳以上」の層の確実な取り組みをめざす方針だ。

南オーストラリア州政府観光局インターナショナルオペレーションマネジャーのマイケル・シリガー氏

 このほか、南オーストラリア州は日本人訪問者が年間9000人規模で落ち着いているところ。州政府観光局のマイケル・シリガー氏によると、予算削減により日本市場では積極的な活動をほとんど展開できていないが、FITや学生層などいわば“固定客”が順調だ。12/13年度も大きな展開は望めないものの、シンガポール航空(SQ)とのオンラインキャンペーンを計画中。シリガー氏は「予算が限られていても、アデレードでできることをする。英語でも日本語でも連絡をいただければ」と語った。

 なお、南オーストラリアのように予算が削減される状況について、西オーストラリアの吉澤氏は「日本市場への依存度が本当に減っている」と指摘。その上で、「オーストラリアを売らなくても他を売ればいいという(旅行会社の)考え方は理解できるが、本当に世界地図の中からオーストラリアがなくなってしまって良いのか。レートの話しかしないようなやり方では、部屋ももらえないし、車も状態の悪いものしか回してもらえなくなる」と警鐘を鳴らした。



取材協力:オーストラリア政府観光局、カンタス航空、西オーストラリア州政府観光局
取材:本誌 松本裕一