ANTA、仙台で観光復興支援会議、風評被害対策や送客支援など決議
全国旅行業協会(ANTA)は9月26日、観光庁長官をはじめとする来賓を招き、仙台市の秋保温泉で東日本大震災からの観光復興支援会議を開催、今後の方針を決議した。今後、東北の観光復興には「何よりも風評被害対策が重要」とし、正確な情報収集と適切な対応とともに、観光関連団体と協力して風評被害の払拭に最大限努める。また、会員や旅行者に対する正確な情報提供や被災地域向けの復興支援ツアー、被災地での支部研修会などの実施による送客支援、修学旅行の誘致のほか、イベントなどで東北地方産の野菜や食材使用を働きかけていくことも盛り込んだ。
すでにANTAでは震災後、東日本大震災対策本部を設置し、旅行の取り消しや風評被害、金融対策などを関係機関に要望する一方で、被災県への支援を実施。各支部でも見舞金や寄付金活動のほか、研修旅行や支援・義援金ツアー、ボランティア活動・ツアーなどに取り組んでおり、今後も34の支部で支援ツアーや研修旅行の予定を組んでいる。さらに「“地旅”で出会う日本の笑顔 がんばろう東北!がんばろう東日本!」と題した観光復興支援ポスターを作成。各支部をはじめ、国、都道府県の運輸、観光関係、報道機関に配布した。
二階会長、風評被害を跳ね返す勢いが重要
溝畑長官、東北全体の集客力高める仕掛けに意欲
会議の冒頭、挨拶でANTA会長の二階俊博氏は「風評被害を跳ね返す勢いを持たなければならない」と強調し、郷里の和歌山県が先ごろの台風で大規模な災害に見舞われたことに言及。全線復旧まで数年を要すると見られたJR紀勢線について「開通できなければ復興できない」として、被害にあった一部の橋梁は応急復旧として列車を低速走行させることを強く働きかけたところ、関係者の意気が上がり、26日朝に白浜から紀伊勝浦まで開通。その先も「年内復旧と3年後の復旧では勢いが違ってくる」と説得し、年内に開通する見通しが発表された。「こういうことをきっかけにして風評被害をなくせるよう頑張っていく」と、例を示す。
東北についても「皆さんが協力してきた」とし、仙台空港の国際線定期便の再開便が往復ともに満席であったことに「その努力が実を結んできたと思っている」と述べた。一方で、福島県については原発事故の影響で「特に国際社会で(風評被害を)跳ね返すのは難しい」としつつ、「それでもがんばるしかない」とする。ANTAは韓国観光公社(KTO)と来年の麗水世界博覧会を契機に日本人観光客誘致促進に向けた業務協約を締結していることから、先日のアシアナ航空(OZ)副社長との会談で「国際博覧会への送客を努力するから、福島への旅行が回復するようがんばってもらいたい」と、福島空港への双方向チャーターを相談したことを明かした。
また、観光庁長官の溝畑宏氏は、震災後の自粛ムード時から現在までの取り組みを振り返り、夏の状況では東北で戻っていないところがあるものの「成果が出てきている」と評価。今後も国内観光活性化に向けてキャンペーンなど積極的に展開をするとともに、東北については「東北全体の集客力を高める仕掛けをしていく」と意向を示した。インバウンドについては原発事故後の安全宣言がないなか、安心安全のイメージ回復に至っていないとして、この部分をてこ入れすることを強調。今後は国内観光では本格復活と昨年を上回る大幅増加、インバンドでは早期の本格回復を重要テーマとして取り組んでいくと語った。