ANTA、仙台で観光復興支援会議、風評被害対策や送客支援など決議
宮城県、交通インフラすべて本格復旧
ボランティア来訪が有効、新形態の商品に期待
宮城県副知事の若生正博氏が福島県の観光状況を説明。9月25日に仙台空港の国際線定期便が再開し、9月24日には新幹線の運行数が震災前と同じ回数に回復。高速道路はもともと被害が少なかったため、交通インフラすべてが本格復旧したと宣言した。また、原発事故による放射能の影響については、宮城県の生産物はすべて検査した上で出荷しており、旅館やホテルで出す食事も安全安心であることを強調した。
ただし、沿岸部の被災地域は「復旧まで数年かかる」と見通す。これについては震災後、被災地を訪れたボランティアが延べ30万人となり、「ボランティア後に周辺の温泉で1泊している」ことから「助かっている」と言及。「観光客の訪問が宮城の復興の大きなインパクトになる」として、ボランティアなどの新しい旅行形態を提案しつつ、さらなる送客協力を要請した。
また、東北経済連合会副会長でホテル佐勘取締役会長の佐藤潤氏が、同ホテルの状況を発表。震災後、1週間で4万5000人のキャンセルとなったという。8月には少しずつ戻り、秋の行楽シーズンには「一番敏感」で予約がゼロだったという関西からの観光客が、仙台空港の再開もあって新規予約が入ってきていると明るい兆しを示す。
被災県支部の状況、回復の状況異なる
旅行しやすい環境作りに協力要請、支援ツアーも積極的に
会議の中では、宮城、福島、岩手、青森、茨城、栃木、千葉の被災7県の支部長が、各支部の状況を報告した。このうち宮城県では、支部長の濱田保氏によると震災後、4会員が廃業に追い込まれた。「この状況が続けばさらに増えるのではないか」と懸念を示す。濱田氏は「宮城から旅行に行く人が増えなければ商売にならない」として、旅行に行きやすい雰囲気の醸成を要望。例えば、来年5月22日のスカイツリーのオープンにあわせ、被災県が団体枠を先取りできるなどの協力が得られれば、「復興も早いと思う」とアイディアを述べた。
また福島県では、支部長の小林次郎氏によると、「旅行業で食べていけるだけの仕事量、客数には遠く及ばない」と現状を報告。また、東京電力の原子力損害賠償請求について、風評被害の賠償では減少率のうち20%が外されている上に計算式が複雑であることを述べ「この数式に損害額を当てはめることすらできない」と不満を示唆した。しかしこの状況下で「救われる部分」として、福島県が28億円の補正予算を組んで実施した「ふくしまっ子夏の体験活動応援事業」を紹介。旅行業者を経由して体験活動をしたものが対象であるため側面支援になっているとし、「補助事業で県内の会員は息をつないでいる」状況だという。
北東北や関東などでは回復の進度が見えつつある。青森県では支部長の折舘公彌氏によると、震災後は停滞したが、青森県では祭りの自粛をしないですべて実施。需要は6月、7月ごろから動きはじめ、7月頃からほぼ元に戻ってきた。また、栃木県では支部長の國谷一男氏によると、他県からの送客が見込めないと判断し、地元だけで鬼怒川や温泉に行こうというキャッチフレーズで送客。全旅協旅行災害補償制度の支えもあり、6月から8月までに前年比90%近くまで回復した。県内が落ち着いてきたとして、今後は被災県への支援ツアーを実施する意向で、11月には岩手への研修旅行を予定している。