DMOガイドラインの改正で何が変わるのか?~観光で地域を活性化するための道筋vol.3-デイアライブ 川口政樹氏
■今後のスケジュール
改正されたガイドラインは、令和7年10月1日から施行(=有効)となります。ただし、更新登録に関する部分については令和9年4月1日からの施行となるため、現在登録されているDMOのうち、令和6年3月31日までに新規登録・更新登録されたDMOについては、当面は現行ガイドラインに則って更新されることになります。
逆に令和6年4月以降に新規登録・更新登録されたDMOは、令和9年度以降、更新登録申請をする必要がでてきます。令和6年度に新規登録・更新登録されたDMOは、令和8年度中には改正ガイドラインに示された要件を全て満たせるようにしておかなければいけなくなるため、必須KPIの数値をどのようにとるかなど、令和7年度から準備を進めていく必要があります。
■DMO(観光地域づくり法人)ガイドラインの改正で何が変わるのか?
ここまで、「観光地域づくり法人の登録制度に関するガイドライン」の改正内容について解説してきました。今回の改正により、DMOのあるべき姿がより明確に定義され、登録基準が厳格化されたことから、従来よりも要件を満たすことが難しくなり、DMOの「数」については、減少していくと考えられます。
一方、DMOの「質」についてはどうでしょうか。もちろん、今回の改正により書類の形式だけ整っていたDMOは淘汰されることで、一定のレベルが担保されるという見方もできますが、大きな課題である「財源」については、安定化についての言及が強くはなりましたが、抜本的に何かが変わるわけではありません。今回の改正の理念を理解し、DMOが成果を出す組織となっていくうえでは、知識と意欲を兼ね備えたプロパー職員と、一定の裁量権のある予算が必要となりますが、財源問題を解決できなければこれらを実現することはできず、ガイドラインが改正されたとて、本質的なDMOの質の向上を図ることは難しいと思われます。
国としても、インバウンドの地方誘客を実現するうえで、地方のDMOに真の力を発揮してもらいたいという想いがありつつ、DMO登録のハードルを上げることで、予算に余力のない地方からDMOがなくなってしまう可能性を高めてしまうことは懸念していると推察します。しかしながら、「地域が自らの発想と創意工夫により課題解決を図る」ことを目的に地方分権改革を推進してきた経緯もあり、DMOの運営にかかるコストを国が負担することは、原則的には考えられません。
となると、地方において自ら安定的な財源を確保することが必須となり、必然的に宿泊税の議論が避けて通れなくなります。つまり、今回のガイドライン改正は、「本来、DMOとはこれだけのことをやるべき組織であり、それを実現するためには安定的な財源が必要不可欠なので、宿泊税を導入するべきだ」と言っているようにも思われます。
「宿泊税の検討は自治体の仕事」と考え、DMOが自ら動くことはあまりないと思われますが、 DMOにとって宿泊税の導入が財源確保に不可欠だと考えるのであれば、議員に働きかけるなど、積極的に提言活動を行うことが重要です。
とはいえ、宿泊税の導入にはやはり自治体の協力がなければ実現しません。あるべき姿のDMOを実現するためには、自治体の覚悟も問われています。
<過去記事はこちら>·観光で地域を活性化するための道筋vol.1~観光の目的と地域経済活性化の4つの方向性
·観光で地域を活性化するための道筋vol.2~観光地域マーケティングを成功に導くための糸口-デイアライブ 川口政樹氏
1996年三重県庁に入庁後、農林、土木、福祉、教育などの行政分野での勤務を経て、2015年から観光行政に携わる。三重県観光連盟出向中に、事務局次長として公式サイトやSNSを全国1位に育てあげるとともに、サイトを活用したマネタイズの仕組みを構築し、DMOの収益構造を大きく改善。
出向後は、県庁にて観光DXの推進や観光振興基本計画の策定を担当。2024年から株式会社デイアライブにて、セミナー講師、観光DX・デジタルマーケティングの支援、観光人材育成などを行っている。観光庁「令和6年度 地域周遊・長期滞在促進のための専門家派遣事業」登録専門家。