ミドル、シニア世代、外国人材の活用など、人材不足の観光業界における求人トレンドは?-アステージ 三野尊之氏

-人材派遣のなかではどういったスキルが求められているのでしょうか。

三野氏 業務渡航分野で言えば、GDSを使用した手配経験のほか、ビザが非常に不安定な状況のためビザ関連業務の知識などを有する人材が求められています。

 必要経験年数としては、 1~3年をベースに見られる場合が多いですが、コロナの影響からここ3、4年はそういった経験が積める状況ではありませんでした。実際に今現在はミドル、シニア世代の方々が活躍されていますが、この経験の穴埋めをどう行っていくかが今後の課題になります。

 実際に経験の少ない方に対してフォローをしきれず退職してしまったというようなこともお聞きしています。

-年齢を気にされるケースは少ないのでしょうか。

三野氏 はい。派遣先の方々もやはりこの4年間は経験が積みにくかった状況は承知していますし、寧ろミドル、シニア世代の方々に来ていただければ、業務を通じてその経験を習得できる機会になると感じておられるようです。

 観光業界限らず現在は人口減少の波が来ていますので、寧ろこのシニア世代をどう活用するかを各社考えているのではないでしょうか。

 当社としても、昨年業務渡航分野の人材需要が急回復したなかで、60代以上含め多くのミドル、シニア世代の方々に貢献いただきました。またそういった層に向けたウェビナーなども実施しました。今後はAIやRPAなどの新たな知識を身に付けていただくための機会提供も検討しております。

astageinc
-貴社に登録されている求職者の状況はいかがでしょうか?

三野氏 業界を離れた方が一定数いた一方で、業界に戻りたいとのお問い合わせも頂戴しております。

 ただ、経験が求められる現在では当社に登録されている方々も40~60代の経験者が中心となっています。

 それぞれお持ちの経験は様々ですが、昨今では訪日需要の高まりを受けて、国内手配の経験者が訪日手配にチャレンジしたり、海外添乗の経験者が訪日ガイドにチャレンジするなど、同じ業界内でも別の職種に挑戦されるケースも増えてきています。

 一方で、20~30代の方々はかなり少ないです。ここは業界としてもう少し未経験でもチャレンジできる環境が整えば自ずと登録者も増えるのではと考えております。

-求人数と求職者の割合はいかがでしょうか。

三野氏 経験を多分に求められるという状況もあり、割合としては求人の方が多いです。

-戻りたい方々はいつつも、業界としては経験が求められる。また、昨今ではDXなどにより人手不足を解消する動きも見られます。業界での人手不足に関わる課題についてはどう感じておられますか。

三野氏 人手が必ず求められる業務に集中するためにルーティン業務などのDXも当然大事ですし、他産業で給与水準が上がるなかでそこもやはり意識すべきと思います。

 一方でコロナ禍を経て、「旅行」の重要性を改めて感じたのも事実かと思います。そういった意味では、旅行業の必要性、素晴らしい仕事だと感じるやりがいの部分も同時に業界から発信してことが重要だと考えています。

-給与水準の部分についての現状はどう感じておられますか?

三野氏 20年4月に「同一労働同一賃金」に関する法律が施行されたことや、派遣も含め他産業での賃上げの影響もあり観光業界でも水準として上がってきていると感じています。

 ただ、業界の生産性や今後の見通しにも影響してきますので、我々としても注視している状況です。

次ページ>>海外人材活用の現状と今後