観光プロモーションにSNSをどう活用?サステナブル対応は?-JNTOフォーラムより
SNS運用最前線、今は「ショート動画」が効果的
インバウンド旅行振興フォーラムの2日目には「SNS運用最前線:今後のトレンドと運用改善への提言」として、JNTOデジタルマーケティングセンター長の本蔵愛里氏、デジタルマーケティング支援事業を展開するPatchの代表取締役でJNTOデジタルマーケティングアドバイザーの梅垣至弘氏が講演を実施した。
梅垣氏は現在注目しているSNS運用のトレンドとして、30秒程度のショート動画を活用したプロモーションを挙げた。TikTokに加え、InstagramのリールやYoutubeショートを楽しむユーザーが世界中で増加傾向にあり、米国の調査によれば、TikTokはFacebookやInstagramよりも平均消費時間が2倍だという。梅垣氏は「ユーザはショート動画に移行してきている。プラットフォーム側もリーチ、エンゲージメントが良いのでショート動画を推している」と説明した。
さらに梅垣氏はショート動画の利点として、静止画より情報量が多く表現の幅が広いことを改めて強調。特に外国人に人気が高い祭りなどのイベントについて、写真では分かりにくい背景やダイナミックな動きが伝えられるので需要喚起に効果的である旨を指摘した。
これに対し本蔵氏は「アドベンチャーツーリズムの促進でも良いツールになる」と期待を示す一方、JNTOとして「なかなかアカウントで発信できていない」と活用に関する課題を語った。梅垣氏は「コストの5倍くらいの効果があがれば良いと思っており、(JNTOでも)チャレンジしていきたい」と話した。
プロモーションに最適なショート動画の作成方法については、梅垣氏が「始め方としては、TikTokやInstagramのリールを見て自ら『時間を溶かす』ことが重要。数を見ていくとこれがヒットする、これは駄目、というのが分かる」と語り、参考になりそうな動画を保存してアーカイブを作ることを推奨した。その上でコツとして「全部見る前提ではなく、最初の2秒でいかに興味を引くかが大切」と強調。「CMは後半に盛り上がりが来るが、SNSは最初に盛り上がりを作り、いかにテンポよく続けていくのかが重要」と話した。
ショート動画の制作パートナーについては、各制作会社のウェブサイトから実績を見て、自らのニーズに合った作成事例があるかをチェックすることを提案。加えて「重要なのはマーケティング視点を持った担当者をつけてくれるか。制作会社は作るプロだがマーケティングや戦略を考えるのが苦手」と話し、「綺麗な動画ではなく、目的を達成するための動画が必要。そうした部分を一緒に考えてくれる事業者を選定することが大切」と訴えた。
生成AI「チャットGPT」は活用できるのか?
梅垣氏は注目しているもう一つのトレンドとして、「生成AI」を挙げ、生成AIによりSNSのアカウント運用を効率化することを提案した。SNSへの投稿やコンテンツの企画、テキストのラインティングなどで幅広く生成AIが活用できるという。
講演ではチャットGPTを活用したコンテンツ企画例を紹介。この際「アカウントをフォローする理由としては、継続的に見たいものがあるかどうかなので、シリーズ化が大切」と語り、チャットGPTにコンテンツのシリーズを提案してもらうことがポイントであるととした。
ライティングについても、例えば「渋谷の観光地としての魅力が伝わるInstagramの投稿文を5パターン考えて、各投稿文はそれぞれ200文字程度」とチャットGPTに打ち込むと、高いクオリティのものが出てくるようになっていると説明。「ライターに頼らず、英訳も依頼でき、ネイティブチェックだけで済む。何百投降も作れるので、かなりのコスト削減になるのでは」と語った。
ただし、生成AIを活用する際には注意点がある。同氏はチャットGPTを例に、「生成AIがあたかも正解のごとく伝える情報が全然間違いということもある」と話し、情報の正確性が担保されていないことがあるため、正誤チェックは必ず実施するよう強く訴えた。さらに、チャットGPTでは現在2021年9月までのデータしか参照できないため、情報鮮度は低い。例えば観光地のおすすめスポットの営業時間が誤っている、といったこともあるので注意が必要だという。
また、梅垣氏は将来的な展望として、著作権問題をはじめとした各種ルールが整えば「制作・クリエイティブはほぼすべてAI化するのでは」と持論を展開。その上で「それでも必要なのはマーケティングや戦略的な部分。より上流のところからSNSの運用を考えることはAIではまかなえない」と人的リソースの重要性を語った。
さらに、梅垣氏は「生成AIにどれだけ的確な指示ができるのかが求められる。検索能力がある人は調べられるが、そうではない人は情報が出てこないのと同じこと。指示を出すのは人間なので、しっかり『指示力』のスキルを磨いておくべき」と話した。