観光プロモーションにSNSをどう活用?サステナブル対応は?-JNTOフォーラムより
日本政府観光局(JNTO)が9月6日・7日の2日間、都内で開催した「第26回JNTOインバウンド旅行振興フォーラム」。前回は主なターゲット国・地域の訪日動向やプロモーション方針などを紹介したが、今回はフォーラム内で開催したテーマ型のセミナーから、「サステナブルツーリズム」と「デジタルプロモーション(SNS運用)」について紹介する。
サステナブルツーリズムは「地方の魅力ありき」、欧州は環境保護への意識が高い
フォーラムではJNTOが重点取り組みの1つとして掲げるサステナブルツーリズムの先進国・ドイツとフランスの2ヶ国のJNTO現地事務所長が登壇、欧州のサステナブルツーリズムに対する取り組みなどを紹介した。
フランクフルト事務所長の臼井さやか氏によれば、ドイツやフランスでは日本とサステナブルツーリズムの概念そのものについて大きな認識の差はないものの「環境保護をより連想する人が多いので期待値が異なる」状況にあることを説明。例えばドイツでは連邦環境省が推進する「環境に配慮した旅行」に基づき、行政や旅行業界がさまざまな取り組みをしていることを紹介した。
臼井氏は例として「ドイツの環境首都」として名高いフライブルクの取り組みを紹介。フライブルクではホテルの客室用カードキーで市外からの公共交通が利用できるほか、レンタサイクルスポットやエコカーの充電エリアが充実しているという。
また、ドイツの旅行業界の取り組みとしては、たとえばルフトハンザグループがCO2排出量のオフセットが含まれている「グリーン運賃」を販売中。旅行会社のなかでは旅行商品にCO2排出量のオフセット率を明示して販売している会社もあるという。訪日商品の傾向としては、サステナブルを名目にしていないものの環境や社会文化などへの影響に配慮した商品が多く、旅行会社からは「日本の宿泊施設のサステナブルに対する取り組みを知りたい」というニーズもあがってきているという。
一方、オーバーツーリズムに悩むフランスでは、国立公園をはじめとした観光客が集中する観光地でオンライン予約を導入することが増えてきているところ。加えてサステナブルの観点から鉄道で2時間半以内で移動できる都市間の国内線3路線が廃止されるなどの動きも出てきている。
パリ事務所長の高野陽子氏によれば、このほかにも国内線の代わりになる長距離夜行列車を拡充しているほか、バスや車両のEV化を進めているところ。パリ市内のバスの多くは100%電気駆動になっており、旅行者は旅先でEVバスやレンタカーを選ぶ傾向にあるとした。
また、主要旅行会社をはじめ70社以上の旅行会社からなるフランス旅行業協会「ATR」でもレスポンシブルツーリズムに取り組んでおり、所属旅行会社はCO2排出オフセット商品などを販売。宿泊施設もアメニティをなくし、再利用できる水ボトルを提供するなど「使い捨てやプラスチックの削減に取り組んでいる」という。
このほか高野氏は今年の3月にフランスの旅行会社を招聘して淡路島や徳島県上勝町、香川県琴平温泉などを巡るファムトリップをコースを分けて2回実施したことを紹介。参加者からはガイド付きのサイクリングやお遍路、地元の食材を使った地産地消の料理など日本ならではの体験を評価する声があった一方、「体験自体はサステナブルでも公共交通機関でなく車でしかアクセスできない。それなら数日滞在したほうがいい」「プラスチック包装が多すぎる」といったコメントがあったという。
高野氏は「フランスからのFITの大多数は言葉の問題などもあり、こうした地方での体験は難しい」としたうえで、「着地型ガイドツアーがオンラインで予約できるともっと訪れやすくなるのではないか」と提案した。また、ドイツ・フランスの旅行社の傾向として現地の伝統文化体験、地産地消、自然、昔からの生活体験、地元の人との交流などの日本ならではの体験が期待されているとし、「そうした観光魅力があるのが大前提で、その上で魅力を磨き上げ、環境整備をして積極的な情報発信することが重要な取り組みになる」と強調した。