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日本で「唯一無二」客室清掃コンサルティングを行う、Clean next代表 西山貴代さんに聞く客室清掃の現状と教育

  • 2023年5月18日
-どこか教育機関みたいなものはあるんですか?

西山 私の知る限りありません。一部の清掃会社では、研修施設に客室を再現し、教育していらっしゃいますが十分でないです。その他に教育できるスタッフがいない、との声もありますので、一括して教育できる施設や機関は必要だと思っています。中でも責任者やリーダーの教育が重要になっています。現在もホテルの新設が続きますが清掃の現場責任者の成り手がいないのが現状です。そこで既存のホテルで活躍いただいている責任者が新天地へ移動し、サブリーダーや責任者代理が昇格することになります。そうすると、作業の流れはイメージできても実務の経験やトレーニングが十分でなく、次第に不安になり「元のポジションに戻してほしい」と声が上がることがあります。OJTも必要ですが、コミュニケーション、メンタルヘルス、ハラスメントなどの知識やマインドの育成がなければ責任者としての役割と業務を果たすことは難しいです。人手不足の観点からも人の定着はマネジメントによりますので、責任者やリーダーの教育は非常に重要になっています。弊社では各現場での教育と個別ミーティングによりその方に応じた伴走型の教育を行っています。

-そうなると、スタッフに教育を施すことが必要と思う、ホテル責任者、清掃会社さんの社長などの存在も重要になってきますね。

西山 以前、「ホテルからクレームがきて大変なことになっている」と、ある清掃会社の社長から相談がきました。そこで私が必要清掃員数を計算してみると、「社長、スタッフが13人足りません」と。実は社長の元にも「人が足りない」と報告は来ていたようなのですが、どの現場も不足していて、採用も難しいので手を打てていなかったようです。ですが、13名も足りないとは想像していなかったようで、社長も驚かれていました。こうした具体的な必要人員数の計算や報告を現場責任者に行っていただきたいのですが、過去の数値や今必要な人数を上げて説明することが多いので、管理職との認識にずれが出ています。既存のスタッフを育てて生産性が上がれば、一人あたりの清掃数も増えるので、実際はそんなに不足しない、と捉える管理職の方がいるのも事実です。こうした数字の出し方、コストへの意識なども教育をすることで補えると思います。その他、ホテル開発の段階で清掃費に幅を持たせることも必要だと思います。既存のホテルに関しても清掃費については、双方、様々な事情がありますので、コミュニケーションを取りながら、歩み寄りをする必要があると考えています。

-そもそもこの客室清掃をやろうと思ったきっかけは?

西山 客室清掃をやりたいと思ったきっかけは、小学生の時に見た『ホテル』というドラマの影響なんです。そのドラマで、ベッドメイクしている姿を見て、「かっこいいな」って思ったんです。それで大学の時に、福岡県の天神にあるホテルで、客室清掃のアルバイトを始めたんです。この時、先輩に「この仕事初めて? あなたセンスあるわね」とおだてられて(笑)。自分が憧れていた仕事でなおかつ褒められて、すごく嬉しかったのを覚えています。その後もいろいろなホテルの客室清掃の仕事をしてきたのですが、藤田観光株式会社の運営するホテルで働いていた際に、技能コンクールに出場し、2016年にベッドメイク部門で優秀賞、2017年にハウスキーピング 審査員特別賞を受賞しました。この時、私をコンクールに参加させてくれたマネージャーには今でも感謝しています。様々な経験を積ませていただいた中で改めて「ホテル清掃の仕事ってすごい」って思っている私が世の中に客室清掃の面白さ、やりがい、魅力を伝え、現場での業務改善と教育により全体のレベルアップを図れるように、客室清掃のコンサルティングを始めました。
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-最後に今後の展望は?

西山 ある清掃会社の方がおっしゃっていました。「この業界は優秀な人がこない」と。優秀な人が来ないではなく、将来が見えず辞められてしまう方が多いように思います。実際に優秀な方はいらっしゃいます。ですが、目標思考やキャリア志向の方は「ここで頑張ってどんな評価をもらえるんだろう」「給与はどのくらいもらえるようになるんだろう」「どんなポジションがあるんだろう」などいろいろ考えた結果、自身のキャリアビジョンとの差を感じ、退職してしまっているように思います。ですので、やはり教育機関のような団体を作り、客室清掃の役割や必要性を伝え、スキルアップのトレーニングプログラム、評価制度なども作っていきたいです。1件1件、現場で業務改善やOJTも継続していくと同時に、私のような立場の者はあまりいないので、客室清掃業界を世間にアピールできたらと思っています。「客室清掃って面白いし、かっこいい」って、広めていきたいですね。

-ありがとうございました。



撮影/映美 取材・文/浦澤 修