ホームエージェント型代理業は人材不足の救世主?導入例など紹介-JATA経営フォーラム
旅行業OBOGやリタイア層の知見を活用
大手旅行会社の取り組みに期待、決済などの課題解決へ
日本旅行業協会(JATA)は3月31日まで、オンラインで「JATA経営フォーラム2023」を開催中だ。今年のテーマは「旅行業再生~質的転換へのアクション~」。数回にわたりパネルディスカッションの内容を紹介してきたが、最後となる今回は分科会Fの「多様な人材が活躍できる産業への挑戦~ホームエージェント型旅行業者代理業の可能性~」を取り上げる。JATAでは2022年6月の総会で5つの提言を発表。その1つの「人財確保/人財育成/人財活用」について、JTA会長の髙橋広行氏は最重要テーマとして「OB・OGに経験や知見を発揮してもらうためのホームエージェント型旅行業代理業者の導入」を検討する方針を明らかにしていた。
JATA副会長
ホームエージェント型旅行業者代理業とは?
パネルディスカッションではまず、JATA事務局が「ホームエージェント型旅行業者代理業」について解説した。ホームエージェント型旅行業者代理業とは、旅行業のOBOGなどが個人で旅行業者代理業者として登録し、所属旅行会社(1社のみ)の商品を営業・販売するもの。登録は自宅住所でも可能で、新規登録手数料は都道府県にもよるが約1万5000円と比較的安く、旅行業者とは違い営業保証金の登録や弁済業務保証金分担金は不要。事故や災害など非常時における対応も所属旅行会社と協力して取り組むことができる。
JATAとしては登録手続きも比較的簡単な点などとともにメリットを打ち出し、普及したい考え。旅行業務取扱管理者が必要になるが、OBOGは有資格者が多いことから阻害要因とはならないとみている。
デメリットとしては、代理業者が旅行者から受け取った旅行代金を所属旅行会社に入金しない、または入金が遅れる場合があるため、リスクを負いたくない所属旅行会社が代理業者に補償金を求めるケースが多いこと。補償金が高額になることもあるという。これに対しJATA事務局では、旅行者が所属旅行会社に直接入金するシステムを提唱している。
JATAではホームエージェント型旅行業者代理業を提唱する背景として、新型コロナの影響で知識や人脈を持った人材が旅行業界から離れたことによる人材不足を説明。加えてコロナ前からインターネット販売の強化などで店舗の縮小が進み、高付加価値商品をコンサルティングしながら販売する方法を検討してきたが、コロナ禍でさらにその波が加速化したことで「営業の空白エリアが広がり、人手不足や来店予約が取れず、対面での相談が困難という声が大きく聞こえる状況」(JATA事務局)にあることを挙げた。さらに2021年4月に高年齢者雇用安定法が改正され、企業は70歳までの就業機会の確保が努力義務となったことも一因だという。