ホームエージェント型代理業は人材不足の救世主?導入例など紹介-JATA経営フォーラム
旅行業OBOGやリタイア層の知見を活用
大手旅行会社の取り組みに期待、決済などの課題解決へ
BtoBtoCが終了へ、対面販売を望む客層を逃さない一手は?
パネルディスカッションではジャルパック代表取締役会長の西尾忠男氏はホールセラーの視点から、店舗の減少により消費者がパンフレットをもってリアルでスタッフに相談するという「ジャルパック(B)toリテール店舗(B)toお客様(C)モデルがポストコロナでは存在しなくなるのでは」との見方を示した。
その一方、OTAやダイナミックパッケージ経由で購入するスケルトン型の旅が増えるなか、「国内はまだ行けるかもしれないが、海外だと行きたい層が限られてしまう」とコメント。ダイナミックパッケージは24時間決済可能で便利という利点があり「否定しているわけではない」としながらも、「紙媒体の好きな人、店舗でアドバイスを聞きつつ旅行を買い求める人への可能性がウェブだと難しい」と問題を提起した。
原氏は「リアルに会わないと対面販売できないと勘違いしている人がいるが、店舗がなくても対面販売が可能」と語り、ホームエージェント型旅行業者代理業で電話やテレビ電話、ZoomなどのWeb会議サービスを利用した対面販売が可能であると指摘。「必ず人がいるのでダイナミックパッケージのようにクリックで終わらない。人手はかかるが高付加価値商品を売るなら十分やっていける」と話した。
これを受けて西尾氏は対面販売を求める顧客を取り逃さないようにするため、ホームエージェント型旅行業代理業を一つの選択肢として顧客に示すことを提案。「代理業はBtoBtoCの最初のBがなくなったところで新たに積み足していく重要なパーツ」と強調するとともに「旅行業界の幅を広げる流通チャネルの1つと明確に位置付け、どうオペレーショナルな育成をしていくべきか踏み混むべき」と語った。
加えて、旅行が薄利多売、価格競争化してしまえば、働き手が工夫する余地がなくなりモチベーションが低下していくとし、「旅行を企画する若手人材がいなくなると、業界は10年後どうなるのか。厚みのある旅行業界が存続するためにも、ホームエージェント型旅行業者代理業が高付加価値商品を売ることが重要」と話した。
対面販売については、芹澤氏も言及。同社では会社にかかってきた電話をホームエージェント型旅行業者代理業に転送するシステムを設けて対応しているほか、代表電話にかかってきた問い合わせについて、後で代理業者から折り返しする方法などで顧客をコンサルティングしているとし、「対面営業を直接やっていることと久しい。うまくいっている」と話した。
所属旅行会社の雇用概念を変える必要、代理業の登録制度も
パネルディスカッションでは、ホームエージェント型旅行業者代理業の認知向上をはかるための施策についても話し合われた。芹澤氏は所属会社の雇用概念を変える必要性があると主張。「正社員が理想かもしれないが、旅行業は自由でいいのではないか。旅行業自体が創造性に富んだ業務だったはず」と語った。同社ではホームエージェント型旅行業者代理業について、旅行業を本業とするケース以外に、他の仕事と掛け持ちをしながら自分の都合のいい時間に業務するケースがあることを紹介。どちらの働き方もうまくいっているとし、「雇用概念を変えていくことと、良い人材と良い仕事を創り出すということを理念に、ホームエージェント型旅行業者代理業を発展的に捉えていきたい」と話した。
西尾氏はホームエージェント型旅行業者代理業の内容についてOBOGなどにしっかり告知をする必要性を強調。加えて「人材をプールする場所を作るべき。代理業者が一歩進めるような制度を作らないとこの制度は普及しない」と語り、代理業者の登録制度を提案した。加えて、所属旅行会社の取り組みとして、ウェブサイトなどに代理業者を得意分野とともに紹介し、消費者が気軽に相談できるようなマッチングシステムが必要であると持論を展開した。
パネルディスカッションの最後には原氏がまとめを実施。コロナ以前のように店舗が増えることはなく、ダイナミックパッケージはAI接客など新たな技術を活用し進化していくとの見通しを示した上で、「いろいろな技術が生まれてくるとは思うが、基本は人と人との対面。丁寧に話して疑問点を解決し、いろいろな旅行を提案・販売することは絶対に消えず残る」と主張。「高付加価値商品やSIT商品など得意な分野を売るためには、ホームエージェント型旅行業者代理業を一つの大きな選択肢として考えていってもらいたい」と呼びかけた。