共通プラットフォームの進捗は?レジリエンスとデータベースで何が変わる?-JATA経営フォーラム

旅行業・宿泊業の負担軽減と業務効率化へ
大規模なプラットフォーム化に向け、参画するメリットも必要

 日本旅行業協会(JATA)は2月21日から3月31日まで、オンラインで「JATA経営フォーラム2023」を開催中だ。今年のテーマは「旅行業再生~質的転換へのアクション~」で、このうち分科会Eでは「観光業共通プラットフォームの構築について~旅行業再生に向け、『協調/共創』『デジタル原則』を考える」をテーマに設定。旅行会社2社と宿泊施設が、JATAが構築をめざす「観光業共通プラットフォーム」について、プラットフォーム構築に関する現状の課題や今後期待することなどを話し合った。

【パネリスト】
日本旅行ツーリズム事業本部国内旅行事業部担当部長 廣谷良氏
農協観光事業統括部長 香川晋二氏
下電ホテル代表取締役社長 永山久徳氏
日本旅館協会政策委員会委員長
【モデレーター】
JTB総合研究所 コンサルティング事業部ツーリズム戦略部長 濱中茂氏

機能は「レジリエンス」と「観光関連施設情報データベース」

 パネルディスカッションではまず、司会を務めたJTB総合研究所コンサルティング事業部ツーリズム戦略部長の濱中茂氏が観光業共通プラットフォームについて解説した。JATAでは2021年10月に旅行業再生戦略会議を立ち上げて議論を進め、昨年6月の定時総会で旅行業再生に向けた5つの提言を発表したところ。提言のうち「協調/共創」ではシステムの共同利用を、「デジタル原則」ではDXによる利便性向上と業務効率化を、「レジリエンス」では観光地災害情報の共有システム構築を掲げていた。

 JATAでは提言を踏まえ、具体的な対応策として観光業共通プラットフォーム構築に向けて検討を進めているところ。プラットフォームは2つの柱があり、1つ目が災害発生時における旅行者の安否確認と現地の状況把握を迅速・正確におこなうための「レジリエンス機能」。2つ目が観光業における生産性の向上と旅行者への情報提供力を向上するための「観光関連施設情報データベース機能」だ。濱中氏によればデータベース機能は宿泊・観光施設などが基本情報やイベント情報などを提供するもので、仕入れ価格をはじめとした事業者ごとに条件が異なるものは含まないという。

 加えてプラットフォームでは宿泊施設などの施設用コードの一本化、インボイス制度を視野に入れた事業者番号の管理もめざす。システムの運用はJATAで実施し、管理事務局を設けて登録依頼やメンテナンスなどをおこなう。なお、プラットフォームのさらなる詳細については後日JATAで説明会を開催する予定だ。

レジリエンス機能のイメージ

 レジリエンス機能については、地震や台風などの災害発生時に観光庁の指示を受けたJATAから対象エリアにある宿泊施設に対し、被害情報の登録を促す。各施設はプラットフォームに被害情報を登録し、それを旅行会社各社が確認できる仕組みだ。

観光関連施設情報データベース機能のイメージ

 観光関連施設情報データベース機能については、宿泊・観光事業者に客室数などの基本情報や、改装・イベント情報などの期間限定の最新情報を登録してもらい、旅行会社が情報を検索・参照できるもの。ゼロベースではなく既存の情報を活用しつつ登録する。また、旅行会社が自社システムに取り込めるようAPIなどのインターフェイスを用意するという。